カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2012/11/16

【アプリ】 図書館日和

引っ越してきて、今一番幸せなのは図書館が近いこと。
歩いて5分ほどのところに県立図書館、20分ほどで市立図書館。
市立図書館は区ごとに多数ありますが、相互取り寄せ可能。
まだ利用したことはないのですが広島大学の図書館もあります。

前に住んでいたところは近くの図書館が小さくて
あまり利用していませんでした。
でも、読みたい本を次々に買っていると
あっという間に部屋が本で埋まってしまう…

今は、近所に本棚がいくつもある気分です(^^)
でもHPの検索機能はイマイチなので
いつも、このiPhoneアプリを利用しています。
図書館日和

あらかじめ、よく利用する図書館を登録しておいて、
気になる本があったら書名を入力。
すると、どの図書館に所蔵されているか、
貸し出し中か、等が一度に分かり、
その場で予約もできてしまうのです。
借りた本や読みたい本の記録も可能。

なんて便利♪

たいていの本はどこかで見つかりますが、
ない場合にはamazon等のリンクにすぐ飛べます。
借りる前にそこでレビューを確認したりもできます。

館ごとの個性も分かってきて面白いですねー。
もちろん、手元に置いておきたいと思った本は
後に購入します。
書き込みしながら読みたい本もありますし。
新刊中心の書店との違いを楽しみたいものです。

Toshokanmae

図書館前の川べりも、紅葉がはじまりました^^
広島は、街中にも紅葉がたくさん。

図書館の静けさって、すごく独特だなぁと思います。
静かな場所って他にもいろいろあるはずなんですけど
なんていうか、音のない音があるような。
心地よくて大好きな空間です。

昔よく通った小名浜の図書館、なつかしいな。
子供のころは広いと感じていたけれど、
今行ってみたらきっと小さいんだろうな。

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2012/11/05

ベストセラー翻訳の裏側

「朗読者」を一気に読み終わり、
とても良かったので感想を書きたいと思いつつ
次に手に取った本が面白すぎてまた一気に読んでしまいました。

ハリー・ポッターの翻訳者、松岡佑子さん著
「ハリー・ポッターと私に舞い降りた奇跡」。


翻訳の裏側…と言っても、この本は万人にお勧めしたい。
ひとつの自伝として、とても面白いです。

ハリー・ポッターのファンはもちろん、
通訳・翻訳を仕事とする方々
(松岡さんはもともと、MIIS等で教鞭をとるほどの同時通訳者です)、
頑張るためのモチベーションが欲しい方、
つらいことがあって立ち止まってしまいそうな方…
誰が読んでもヒントをもらえる本だと思います。

ハリー・ポッターは、
映画のシリーズ途中から仕事で関わってきたこともあり
翻訳本も原書も持っています。
映画も、後半にいくにつれハマったものでした。
でも、この本の方がハマってしまった。

松岡さんは、なんと福島県南相馬市のご出身。
同郷ということでまず親近感が生まれて。
ハグリッドの大らかな訛りは、東北弁を参考にしたとか。

映画化が決まったときの不安。
字幕の監修を依頼され、戸田奈津子さんに
「原作を読み込んでいる立場として、
セリフを変えさせていただくかもしれない」と伝えたエピソード。
「もちろんOKです」という戸田さんの謙虚な姿勢。
しかし、修正はプラスマイナス1文字以内で、という
クライアントからの厳しい制限。

ベストセラーとなり、気軽に著者と連絡もとれなくなって
訳語選びに苦労した話。
完結まで10年かかった長編ですから、伏線なども多く
真意が分からないと訳しづらいところが多々あったと思います。
でも、著者サイドが秘密主義を貫く中で
どうにか翻訳書を出し続けなければならない。

そこで、なんと世界各国のハリー・ポッター翻訳者たちで
チャットルームを立ち上げたそうです。
「ハリー・ポッター」は60数カ国で翻訳書が出されています。
その翻訳者たちがインターネットで繋がり、
いろいろな解釈をめぐり議論をし合ったとのこと。
このことは全然知りませんでした。
翻訳者たちのプレッシャー、熱意、
そして作品への思い入れが感じられるエピソードです。

作品を読む前にタイトルを決めねばならない、というのも
なんと厳しい条件だろう…と思いました。
内容に関する質問にも答えてはもらえない。
たとえば「half-blood prince」は
「half-blood」が差別表現になりうる国もある、と
翻訳者たちで著者にかけあったそうです。
「mysterious」という表現ならOKとこの時は返事がきて
日本版では「謎のプリンス」となったとか。


翻訳に関する部分を中心にメモしてみましたが
とにかく半端じゃない努力を重ねてきた方だということが
よく分かる本でもありました。
そして、旦那様の死をはじめとして
つらいことをいかに乗り越えてきたかという、その強さ。

全編を通して、旦那様への愛がひしひしと感じられました。
受け継いだ出版社を、何としても潰したくない。
そこで出会った Harry Potter という一冊の本。

奇跡のような、運命のような、
でもやっぱり切り開いてきたのはご本人の行動力。

様々な出会いが繋がって、思いを共有する仲間ができ、
大きなプロジェクトが実現していく過程はとても感動的で
偶然と必然は紙一重だな、と思えてきます。

ずっと手元に置いておきたい一冊となりました。

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なんだか、一気に寒くなってきた今日このごろ。
こたつは置かないようにしているのですが
ホットカーペット+毛布でもほぼ同じ効果がありますね…
心地よすぎる(>_<)
でも、そんな中での読書は至福のひととき。

毎年思うけど、大好きな秋はみじかいな。
さよなら秋空。

Akizora

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2012/11/02

【仕事関連】 読書メモ

勢いに乗って、直近で読んだ本をメモっておきます。
英訳の仕事が次々に入ってきており、
新鮮で楽しい反面、勉強不足を感じることも多々あります。

○「英語ライティングルールブック 第二版」

積ん読にしていたのを反省…すごく面白かったです。
「文法編」から始まるのですが、
そこがちょっと退屈で止まってしまっていました。
英文を書かねばならない、という必要性に迫られていなかったのも
一因かもしれません。

今回、あやふやだった「句読法編」から読み始めてみたら
一気に読んでしまいました。
コロンやセミコロン、括弧の使い方など丁寧に解説されています。
次に「語法編」。
類義語のニュアンスの違いも発見がたくさん。
そしてイギリス英語とアメリカ英語の違い、差別用語などにも言及。

この本は、興味のあるところから開くのが正解かもしれません。
もちろんレファレンスとしても使えますが
通読して良かったと思います。


○「aとtheの底力」

定番ですが、再読。
冠詞は、分かったつもりになっても
頭をひねる局面に何度も出会います…
この本は概念を分かりやすく説明してくれていて
同業者の方たちの評価も高いです。


○「わかりやすい英語冠詞講義」

同じ本を繰り返し読むのも大切ですが
別の視点から書かれたものを読むと
はっと気づくことがあったりもするので、こちらも。

冠詞は、結局は大量に英文を読むことで
感覚を身につけるしかないのだろうなと思います。
洋書も読んではいますが、まだまだ絶対量が足りない。
仕事で読む文書は偏っているので…

洋書は、辞書がすぐ引けるようKindleで読むことが多いです。
今は「The Film Club」を読んでいます。
邦訳は「父と息子のフィルム・クラブ」
わりとマニアックな映画の知識が出てきて、
映画ファンならきっと楽しめそうな一冊です。


○「弁理士が基礎から教える特許翻訳のテクニック」

ふと手に取った一冊でしたが、
著者が翻訳者になるまでの個人的な背景などについて
詳しく書かれているところが興味深く面白かったです。
特許制度について頭の整理にもなります。
パリルート、PCT、拒絶査定などについて
流れを追って説明されています。
そして、特許庁やWIPOのサイトの活用法についても。

2011年の出版なので情報も新しめですし
入門編としてもオススメできそうな一冊です。
後半は、特許に頻出の表現について解説されているようで
まだ未読ですが復習のため目を通したいと思っています。


本は、「時間ができたら読もう」と思っていたら
絶対に読めないんですよね(自戒)。
時間は作る、というように心がけたいなと思っています。

とりあえずお風呂は読書タイム。
こんなのが大活躍です(^^)

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2012/11/01

愛を読むひと

数日前、眠れなくて久々にHuluをのぞきました。
会員のままなのに、全然観ていない…

静かな映画が観たいなと思って
なにげなく選んだ「愛を読むひと」
観てるうちに眠れるかなーと思っていたら
どんどん引き込まれてしまい、
涙ぼろぼろで結局朝まで眠れませんでした(^-^;)

なぜあんなに感情を揺さぶられたのか分かりませんが
予想と全然ちがう作品でした。
恋愛ものではないと思うし
「愛」と、ひとことでくくってしまうのも違う。

よく分からないのです。
でも、そうせずにはいられなかった、ということだけは分かる。

世の中、きれいに言葉におさまる感情ばかりではない。
すべての行動が善と悪にぴったりおさまるわけでもない。
何にプライドを持ち、恥を感じるかの基準も
驚くほどに人それぞれ違う。

先日、ナチスの収容所に関する本を読んだばかりですが
奇しくもこの作品にもそれが大きく関わってきました。
そういう作品は他にもたくさんありますけど
それぞれ視点が違っていて深く考えさせられます。

この作品は、ドイツが自らの罪を裁いたもの。
罪深い時代であったと同時に、
目に見えない犠牲者もたくさんいたのだろうと。
そして、その消えない歴史を抱えて生きる人々の気持ちは
とうてい想像できるものではない。

時代に抗えるだけの強さを持った市井の人々が
一体どれだけいるのでしょう。
少なくとも私は自信がありません。
今ですら、気づかないうちに飲み込まれていることが
多々あるというのに。

印象に残ったシーンはたくさんありましたが
the に丸をつけていくシーンは鮮烈でしたね…
(観た人にしか分かりませんが)
あそこで涙が止まらなかった。

そしてラストの残酷さ。

とにかくケイト・ウィンスレットが素晴らしくて。
彼女の演技が、すべてに説得力をもたらしていたように思います。
近年、大好きな女優さんの一人です。
少年も、レイフ・ファインズも良かったですけど、
レイフ・ファインズは「シンドラーのリスト」で
残酷なナチスの将校を演じていた印象が強烈なので
ちょっと雑念が入ってしまった…


この作品には原作の小説があります。
ドイツの作品です。

小説の邦訳は「朗読者」
映画もこのタイトルで良かったんじゃないかな…
「愛を読むひと」って何か違う感じがして
タイトルについていろいろ調べてしまいました。

映画はドイツが舞台ですが英語で製作されており
原題は「The Reader」です(アメリカ・ドイツ合作)。
女のために本を読み続ける男、
本当にそれだけの意味なのかな?なんて深読みしてしまいました。
ダブルミーニングがあるような気がして。

…結局は深読みしすぎでした。えへ。

--------------------
ドイツ語原題の Der Vorleser は男性単数形であり、明らかに主人公ミヒャエルを指している。『朗読する男』と訳すことも可能だったが、先に訳された英語版のタイトルが The Reader となっており、編集部の提案に従って『朗読者』とした。

-「朗読者」訳者あとがきより- (訳者:松永美穂さん)
--------------------

どうしても原作が読みたくなって、図書館で借りてきました。
楽しみです。


この秋は、仕事の合間にやたらと本を読んでいます。
県立と市立の図書館が徒歩圏にあって幸せです。

ある日の帰り道。
平和公園近くの川沿いにある「カフェ・ポンテ」が
まるでクリスマスのような装いでした(^^)

Photo


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2012/10/25

それでも人生にイエスと言う

仕上げは明日にしよう、と訳文を寝かせる間に一冊。
V・E・フランクル「それでも人生にイエスと言う」を読みました。
「夜と霧」の著者です。
読書の秋。内省の秋。

著者がナチスの強制収容所から解放された翌年に行った
講演をまとめた本です。
収容所での体験に加え、精神科医としての経験も多く語られ
少々難解ですが説得力がありました。

一度では理解し切れていないと思います。
それでも、心に残る言葉は数多くあり
折にふれて読み返したいと思いました。

生きる意味とは?
誰でも考えたことがあるのではないでしょうか。
印象的な部分を少しメモしておきます。
(原文通りではありません)

----------------------
人生に意味を問うてはいけない。
人生とは問われるものであり、
問われたときにどう応答(行動)するかが
その人にとっての生きる意味である。

私たちは、悲観主義にもとづいてしか
行動を起こすことはできない。
楽観主義でなだめすかすよりも、
悲観にもとづいてなお何かしようと手をのばすことに意味がある。
つまり苦悩には意味がある。

しあわせは、目標ではなく結果にすぎない。

死の存在が人生に意味を与えている。
もし人間が永遠の命を持っていたら
何もかもを後回しにしてしまうだろう。
----------------------

収容所での体験にもとづく、
「苦悩できないという苦悩は最大の絶望」という一節は
真に迫るものがありました。
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」で私が感じた
深い哀しみはこれだったような気がします。
登場人物たちはその絶望に気づいていなかった。

そして、「人間の苦悩は比べられない」という一節。
本書を読めば、その壮絶な体験と自分を比べてしまうかもしれない。
でも、比べることには何の意味もないと思います。

苦悩はその人個人のものでしかない。
それは震災の時にも強く感じたことです。
強制収容所での苦悩も、ささいな失恋の苦悩も
学校でのいじめの苦悩も、本人にとってどれだけ大きいかは
本人にしか分からない。

そして、それをどう乗り越えるか、
心の持ち方の自由だけは平等に与えられている。

たとえば、囚人のためにこっそり
自腹で薬を購入していた収容所所長の話。
いっぽう、同じ囚人仲間を虐待していた囚人の話。
問題であり続けたのは、置かれた立場や状況ではなく
裸の人間そのものであると。


高校時代の古典のおじいちゃん先生を思い出しました。
とてもゆっくりした、優しい語り口で授業をするので
私はいつも心地よくうつらうつら…
「こぅら、眠り姫」と何度呼ばれたことか。

脱線しました。
そんなことはどうでもよいのですが、
先生が最初の授業で「人生って何だか知ってるか?」と
黒板に書いた図だけははっきりと覚えています。

「生→死」
矢印は黒板の端まで、長かった。
私たちは、死をめざして生きているんだよと。
衝撃を受けたあの頃は本当に若かったのだなと思います。
今はずっと身近に、静かに死を感じるようになりました。

フランクルが言う「意味のある死」が
少しだけ理解できた気がします。
今まで自分が考える意味のある死とは、
たとえば三浦綾子さんの「塩狩峠」のラストだった。

けれど、そんな分かりやすいものだけではなく
ひとりひとりの内面で為しうることなのだと。
苦悩と死、そして愛が、人生に意味を与えているのだと。

一瞬にして町が破壊されても、大勢の命が失われても
社会は普通にまわっていく。
私が今死んだとしても、本当に困るのはうちにいるウサギくらい。

それでも人生にイエスと言う。
言いたい。

そんなことを思ったほろ酔いの夜長でした。


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2012/03/03

映画誕生へのオマージュ 「ユゴーの不思議な発明」

先日、「人生はビギナーズ」を観に行った時(これもとても良い作品でした!)に大行列ができていた「ヒューゴの不思議な発明」
3Dの評判が良く、スコセッシ監督ということもありとても気になって
初の3D映画体験になるかもなーと思っていました。

翌日、本屋さんに行くと原作の「ユゴーの不思議な発明」が山積み。
何気なく手にとってみてびっくり。
こんな本だったんだ…

2007年に出版され、訳書もその頃に出ていて
コールデコット賞を受賞していたそうですが全然知らなかった。

映画が面白かったら、時間ができた時に読んでみようかな。
そう思って本屋さんをあとにしたものの、どうしても気になって
結局引き返してしまいました。
映画を観るとイメージが定着してしまうし、
やっぱり原作はまっさらな状態で読んでみたいなと思ったので。

家に帰ってページをめくると
あっという間に引き込まれて一気に読了。
レビューはブクログに書きました。
特に映画好きな方々にはイチオシの作品です。
ブクログレビュー 「ユゴーの不思議な発明」

何も知らず子供向けかなーという先入観があったのですが
これは映画誕生の歴史を少しは知っている人でないと
本当の意味では楽しめないのではないかと思います。
古き良き時代を知る、昔からの映画ファンの方々にこそ
強くオススメしたい作品です。
(…と言いつつ、私はその時代を生きていないわけですが)


今、初めて映画の予告を観てみましたが
イメージぴったりで何だかすごくワクワク。

しかし「えー、ここ見せちゃうの?!」という部分も(^-^;)
ネタバレの尺度って難しいですね…
(レビューを書くときにも、いつも悩む点ですが)

どことなく「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出す部分もある。
失われゆく時代を引き止めようとするような。
原作は、そんな映画愛にあふれた作品でした。


ただ、絵を堪能するには文庫はやはり小さいのが難点。
現在品切れのようですが、
原書のハードカバーも欲しいなと思っています。

 

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2011/02/18

「わたしを離さないで」

もうすぐ映画が公開される予定の
カズオ・イシグロ 著 「わたしを離さないで」。
原作の評判がとても良かったので手に取りました。

引き込まれて一気に読んでしまったのですが
内容について触れるのが非常に難しいです。
あとがきによれば、イシグロ氏は
「別に帯でネタばらししても構わない」とまで言っているそうで
確かにオチなどを楽しむのが目的の作品ではないと思います。

それでも、何も知らずに読み進むあの緊張感は
ぜひ皆さんに味わっていただきたいと思います。
ですので、内容については触れません。
(映画の予告を見るとほぼ分かってしまいますが…)

読み終わった後は、圧倒されてしまって
しばらく何もする気が起こりませんでした。

言葉にしづらい感情とか、心の機微というものを
文字という彫刻刀で丹念に彫りおこしていくような文章。
土屋政雄さんの流れるような翻訳が
また素晴らしいと感じます。

ラストシーンでは私もある風景の中にいました。
風を感じました。
今もその景色が鮮明にまぶたの裏に焼き付いていますし
思い出すと静かに涙がこぼれます。

一見、特殊な世界を描いているようでありながら
とても普遍的なものを描いている物語でもあります。

ぜひ、映画公開の前にご一読を。


「わたしを離さないで」 映画公式サイト

予告が見られます。
シャーロット・ランプリングが懐かしいです。
音楽担当はレイチェル・ポートマン。
「ショコラ」の方ですね。楽しみです。

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2010/06/29

湊かなえ「告白」、読みました

湊かなえさんの「告白」を読みました。
何とも救いの無い、重い話。しかしリアル。

あるサイトをのぞいてみたら
生徒に復讐する教師を否定する声が多く驚きました。
そして「ゆがんだ家庭で育ち、
親に人生を狂わされた少年A・B」は可哀想という声。
子持ちの女性が多かったようですけど。

なんというか…
小説の意図がまったく伝わっていないような印象を受けました。
あくまでも私の主観で、です。
読む側の受け取り方は、こうも様々なのだなぁと。

少年犯罪がやたら多い昨今、
「心の闇」だの何だのチンケな言葉で犯罪者を美化するから
馬鹿なことをする輩が後を絶たない。
少年法などというものがあって、罰せられないことを知っているから
調子に乗ってガキらがバカなことをする。


法律で罰せられないからといって、調子に乗るなよ?
法律だけじゃ裁ききれないものが、人間にはあるんだよ。


私はこの小説からそういうメッセージを感じましたし
それは、子供たちに対するメッセージなのではないかな。

それなのに映画はR15指定ということに大きな違和感を感じました。
肝心の少年たちには見せられないのね。
誰に何を伝えたいの?
暇があれば観にいこうかなとは思っているけど。

私は法学部でしたが
死刑制度についての論議では反対派でした。
犯罪者だからといって、赤の他人が命を奪う権利はない。
何より、人が人を裁けば冤罪のおそれがある。
そして、死ぬことは一番楽に逃げられる道だと思うし
もっと苦しんだり悔やんだりするべきだと。

ただし、唯一の例外。
それは身内だと思っていました。
自分の家族が殺されたら、きっと私は相手を殺したくなる。
そして、それを誰が責められる?
これはもう、法律云々の話ではないです。


「生徒より自分の子供のほうが可愛いのは当たり前」
第一章"聖職者"に出てくる台詞は説得力があります。
子供を殺された教師が復讐するのは、至極当然のことでは?
完全に共感しましたけどね。

教師だってただの人間、
そんなこと、私は中学生の頃から気づいていましたよ。

説得力がなかったのは、教師の子供を殺してしまうシーンかな。
その他は概ね、リアリティを感じました。
クラスの中のいじめも、自己満足系の熱血教師も。
多少誇張はあるにしても、かつて自分が見てきた光景だから。
教師によるいじめもあれば完璧だったかも。

しかしこの小説は、もともと独立した短編だった第一章、
「聖職者」だけでも良かったと思う。
第一章の秀逸さはすごい。
どうしても、第一章の鮮やかさに他の章が負けてしまう。


全体の構成手法としては芥川龍之介の「藪の中」ですね。
全員が真実をしゃべってるわけではないと思って読むと面白いです。


今日のニュースでもこんな事件が。
これで罰せられないなんて、おかしいでしょう。

<いじめ>中1女子生徒を裸にして撮影 岐阜県の公立中
6月29日2時31分配信 毎日新聞

 「岐阜県内の公立中学校1年の女子生徒(12)が、2年の女子生徒ら5人に呼び出され、椅子に縛り付けられて衣服を脱がされ、その様子を撮影した動画が少なくとも十数人の生徒にメール送信されていたことが分かった」

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2009/02/16

おかしな二人/岡嶋二人盛衰記

仕事が山ほど重なってヒーヒーの日々が、ちょっと一段落しました。
久々にコメディ本編の字幕を翻訳したので楽しかったです。
やっぱり本編の翻訳が一番楽しいconfident
1600枚強を正味4日で作業という、
私にしては強行スケジュールでした。

最近、新しくエージェントを増やし
韓国ドラマの日本語監修のような仕事も始めました。
より自然で適切な日本語のセリフに練り上げる作業です。
これがまた、とっても楽しくて!

韓国語の翻訳者さんが訳した字幕をチェックするのですが
やっぱり人によってクセや特徴があるのが分かって
自分にとっても非常に勉強になります。
訳文を練り上げていくのって、ほんと楽しいんです。
いい表現が浮かんだら「あっ、これだ!」って。
翻訳者さんの表現にうなることもありますし。
現在、シリーズ物の1時間ドラマを週に3本担当中です。

そんな毎日ですが、いろいろと本も読んでいます。
中でも、こちらの本がすごく面白かったです。
わりと厚めなのに、一気に数時間で読んじゃいました。

406263399Xおかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)
井上 夢人
講談社 1996-12

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岡嶋二人さん。
二人で共作していた乱歩賞作家ですが、
もともと推理小説にあまり縁がなかった私は、
まだ1作も読んだことがありません。

でもまず「共作作家」というものに、とても興味がありまして。
共作作家ではエラリー・クイーンも有名ですが、
創作の秘密については終生明かさなかったんですよね。
作家なんて自我のかたまりのようなイメージがあるので、
2人で・・・ってどうしても想像できなくて。

もう一つは、東野圭吾さんの作品を読むことで
「推理小説」の書き方に興味を持ったこと。
自分には絶対書けないな~って思える、多様な発想。
東野さんの自伝エッセイには、
さすがにそこまで秘訣はさらされていませんでした。

「おかしな二人/岡嶋二人盛衰記」には、
何から何まで、すべて手の内がさらされています。
(当然、ネタバレ満載なのでご注意ください)
作品を読んでからの方が、より楽しめるだろうとは思ったものの、
読みたいと思ったら我慢がききませんでした(^^ゞ

へえ~~、こんな風に思いつくのかぁ、と
興味津々で読みました。
二人とも文学少年じゃないところがまた面白い。

でも、やっぱり焦点は二人の関係です。

「盛」の部は、乱歩賞を授賞するまで。
「衰」の部は、プロ作家になってから、コンビを解消するまで。

二人の頂点は乱歩賞だったということ。

切ないです。
まるで一編の恋愛小説を読んだような読後感でした。

無邪気に乱歩賞を目指していた二人が、
だんだんすれ違っていくその姿は、
作家という枠を超えて、普遍的なものを感じます。
多くの人が、こんな経験を一度はしているのではないかと。
相手が友達だったり恋人だったり、いろいろでしょうけど。

コンビの片割れ、井上夢人さんの視点のみから書かれているので、
余計にリアルです。
相手の気持ちが見えない、分からない・・・

訣別のシーンでは涙が止まりませんでした。


長くなってしまいましたが、オススメです。

ネタバレだらけなので、
後で作品を読む気になれるかな~と不安だったのですが
早速、1冊注文してしまいました。

4061838091あした天気にしておくれ (講談社文庫)
岡嶋 二人
講談社 1986-08

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「おかしな二人」を読んでいたら、ネタバレ満載にもかかわらず
すごく読みたくなってしまいました。

なんと、この作品は乱歩賞受賞作・・・ではなく、
受賞前年に最終候補まで残りながら、落選した作品なのです。
その落選の理由がまた・・・

そこは「おかしな二人」本編でどうぞsmile

書かれた背景を知っていると、また面白く読めそうです。
いろんなことに思いを馳せながら。

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2009/02/03

活字熱

気分転換にカフェで仕事をした後、フラッと本屋へ。
久々にいろんな本を買ってしまいました。

8割がた読んだのに、デビュー作は読んでいなかった
東野圭吾の乱歩賞受賞作、「放課後」。

406184251X放課後 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社 1988-07

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昨日読んだ、自伝エッセイの影響が大きいですcoldsweats01


芥川賞受賞作の「蹴りたい背中」だけ読んでいたけど
デビュー作を読んでいなかった、
綿矢りさの文藝賞受賞作「インストール」。

4309407587インストール (河出文庫)
綿矢 りさ
河出書房新社 2005-10-05

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ほぼ全ての作品を読んでいますが、
最近ご無沙汰だった山田詠美さんの短篇集「風味絶佳」。

4167558068風味絶佳 (文春文庫)
山田 詠美
文藝春秋 2008-05-09

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昔、一時期結構読んでいた星新一の名作集、
「ボッコちゃん」。
これは引っ越しで捨てたのかな~、
持ってたはずが無かったので、また買っちゃいました。

4101098018ボッコちゃん (新潮文庫)
星 新一
新潮社 1971-05

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「ボッコちゃん」の中に「生活維持省」という短篇があります。
これを久々に読みたかったのです。
「イキガミ」という漫画のパクリ騒動で騒がれていましたね。
詳細は以下。
http://www.hoshishinichi.com/ikigami/index.html

個人的な考えを言えば、ここまでいくとパクリだと思います。
設定だけじゃなく、ディテールも似ていますからね。
しかし、もう騒動は一応収束しているので、
論争するつもりはこれっぽっちもありません。
コメント欄でケンカを売られても買いません。

ただ、一つだけ言いたいのは。
小学館の編集者ともあろうものが、
「『生活維持省』なんて読んだこともない」と
堂々と言うのはいかがなものであろうと。

ショートショートの大家、星新一の、
それも直木賞候補になった作品ですよ。
本当に知らなかったのなら恥じるべきですし
ここまで内容が酷似していたら、
何か他に言うことがあるんじゃないかと思います。

そんなこんなで、敬意をこめて
「ボッコちゃん」を再購入しました。
今までに3回くらい買っている気がしますが。

「生活維持省」、何度読んでも素晴らしいです。

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