カテゴリー「翻訳全般」の記事

2013/01/08

新年を迎えて

新年のご挨拶が遅くなりました。
ご訪問くださったり、メールをくださったりする皆様、
いつもありがとうございます。
超マイペース日記ですが、今年もよろしくお願いいたします。

昨年後半はいろいろと書きたいこともあったのですが
何かと慌ただしく、そのまま過ぎてしまいました。
大変なこともあったけれど、
京都や福岡に足をのばしたり、宮島で登山したり、
楽しい思い出もできた半年でした。
せっかくなので、こちらに住んでいるうちに
西日本のいろんなところをもう少し回ってみたいです。

その中でもずっと考えていたのが大学院の受験でした。
広島大学では、過去の経験と東日本大震災をうけて
「放射線災害復興学」というプログラムが立ち上がっています。
除染実習やリスクコミュニケーションの演習、
福島やチェルノブイリでのフィールドワークなどもあり
内容的には私がまさに今学びたいものでした。
授業やレポートは全て英語、米国での短期語学研修もあります。

仕事の合間に関連する書籍を読みつつ、受験について調べ、
説明会にも参加して、後日教授の研究室へお邪魔したり…
いろいろとお話を聞いた上で、思っていたのと違う部分もあり
私には今は無理だなという結論にいたりました。

けれど、とても有意義で魅力的なプログラムです。
意外に知られていないようなのですが、
お若い方などは特に、興味があれば覗いてみてください。

広島大学「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」

このことを考えている過程で
あらためて、今の自分の軸は仕事なのだなと気づきました。
5年間、仕事を完全に離れる…というのはちょっと想像ができず。
両立できるほど甘いカリキュラムではないようです。

(広島大学へ向かうバスの中から。
東広島はすっかり雪景色で別世界でした)

Higashihiroshima


仕事のほうは、最近は英訳がメインになってきており
指名していただけるようにもなりました。
少しずつ広がり、さらに面白くなっているところなので
またカメの歩みでも前進していきたいと思います。
いつか、放射線関連などの仕事でも
役に立てるようになれたらな、という淡い思いもあり
今はやはり実務系の翻訳に興味が向いていますね。
映像翻訳も、条件が合えばお引き受けしていますが。


学びたいこと、自分にできること、
できるようになりたいこと、仕事の方向性…
いろいろ考え始めるとキリがないのですが、
やりたいことをやりつつ学びつつ、考えていけたらと思います。

今年の抱負は特に立てておらず。
あえて言うなら、
仕事以外の部分をもう少し充実させられたらいいなと。
以前から考えていた陶芸や、絵、ピアノなど
やりたいことはいくらでもあるのですが
ありすぎて困っています(^-^;)
もちろん、読書も忘れず。

仕事とはまったく関係のない時間も
大切だなと思う今日この頃です。
それが知らぬ間に仕事の幅を広げることもあるのではないかと。

昔沖縄によく行っていた頃は、音楽が生まれる土地だ♪ と感じ、
青森で雪の中、津軽海峡を眺めた時は
文学が生まれる土地だわ…と感じました。
狭い日本でも、土地に流れる空気は全然違うものですね。

広島は、なんだか絵を描きたくなる街です。

年末に、一年のことをいろいろと思い出しながらも
言葉にならずスケッチした一枚。
いつか、しっかり描けたらいいな。

Genbakudome

年末にもひとつ、ブログを通して嬉しいご縁ができましたが
今年もいろんな方とお会いできたらと思います。

ではでは、良い一年になりますように(^ ^)

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2012/11/05

ベストセラー翻訳の裏側

「朗読者」を一気に読み終わり、
とても良かったので感想を書きたいと思いつつ
次に手に取った本が面白すぎてまた一気に読んでしまいました。

ハリー・ポッターの翻訳者、松岡佑子さん著
「ハリー・ポッターと私に舞い降りた奇跡」。


翻訳の裏側…と言っても、この本は万人にお勧めしたい。
ひとつの自伝として、とても面白いです。

ハリー・ポッターのファンはもちろん、
通訳・翻訳を仕事とする方々
(松岡さんはもともと、MIIS等で教鞭をとるほどの同時通訳者です)、
頑張るためのモチベーションが欲しい方、
つらいことがあって立ち止まってしまいそうな方…
誰が読んでもヒントをもらえる本だと思います。

ハリー・ポッターは、
映画のシリーズ途中から仕事で関わってきたこともあり
翻訳本も原書も持っています。
映画も、後半にいくにつれハマったものでした。
でも、この本の方がハマってしまった。

松岡さんは、なんと福島県南相馬市のご出身。
同郷ということでまず親近感が生まれて。
ハグリッドの大らかな訛りは、東北弁を参考にしたとか。

映画化が決まったときの不安。
字幕の監修を依頼され、戸田奈津子さんに
「原作を読み込んでいる立場として、
セリフを変えさせていただくかもしれない」と伝えたエピソード。
「もちろんOKです」という戸田さんの謙虚な姿勢。
しかし、修正はプラスマイナス1文字以内で、という
クライアントからの厳しい制限。

ベストセラーとなり、気軽に著者と連絡もとれなくなって
訳語選びに苦労した話。
完結まで10年かかった長編ですから、伏線なども多く
真意が分からないと訳しづらいところが多々あったと思います。
でも、著者サイドが秘密主義を貫く中で
どうにか翻訳書を出し続けなければならない。

そこで、なんと世界各国のハリー・ポッター翻訳者たちで
チャットルームを立ち上げたそうです。
「ハリー・ポッター」は60数カ国で翻訳書が出されています。
その翻訳者たちがインターネットで繋がり、
いろいろな解釈をめぐり議論をし合ったとのこと。
このことは全然知りませんでした。
翻訳者たちのプレッシャー、熱意、
そして作品への思い入れが感じられるエピソードです。

作品を読む前にタイトルを決めねばならない、というのも
なんと厳しい条件だろう…と思いました。
内容に関する質問にも答えてはもらえない。
たとえば「half-blood prince」は
「half-blood」が差別表現になりうる国もある、と
翻訳者たちで著者にかけあったそうです。
「mysterious」という表現ならOKとこの時は返事がきて
日本版では「謎のプリンス」となったとか。


翻訳に関する部分を中心にメモしてみましたが
とにかく半端じゃない努力を重ねてきた方だということが
よく分かる本でもありました。
そして、旦那様の死をはじめとして
つらいことをいかに乗り越えてきたかという、その強さ。

全編を通して、旦那様への愛がひしひしと感じられました。
受け継いだ出版社を、何としても潰したくない。
そこで出会った Harry Potter という一冊の本。

奇跡のような、運命のような、
でもやっぱり切り開いてきたのはご本人の行動力。

様々な出会いが繋がって、思いを共有する仲間ができ、
大きなプロジェクトが実現していく過程はとても感動的で
偶然と必然は紙一重だな、と思えてきます。

ずっと手元に置いておきたい一冊となりました。

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なんだか、一気に寒くなってきた今日このごろ。
こたつは置かないようにしているのですが
ホットカーペット+毛布でもほぼ同じ効果がありますね…
心地よすぎる(>_<)
でも、そんな中での読書は至福のひととき。

毎年思うけど、大好きな秋はみじかいな。
さよなら秋空。

Akizora

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2012/11/02

【仕事関連】 読書メモ

勢いに乗って、直近で読んだ本をメモっておきます。
英訳の仕事が次々に入ってきており、
新鮮で楽しい反面、勉強不足を感じることも多々あります。

○「英語ライティングルールブック 第二版」

積ん読にしていたのを反省…すごく面白かったです。
「文法編」から始まるのですが、
そこがちょっと退屈で止まってしまっていました。
英文を書かねばならない、という必要性に迫られていなかったのも
一因かもしれません。

今回、あやふやだった「句読法編」から読み始めてみたら
一気に読んでしまいました。
コロンやセミコロン、括弧の使い方など丁寧に解説されています。
次に「語法編」。
類義語のニュアンスの違いも発見がたくさん。
そしてイギリス英語とアメリカ英語の違い、差別用語などにも言及。

この本は、興味のあるところから開くのが正解かもしれません。
もちろんレファレンスとしても使えますが
通読して良かったと思います。


○「aとtheの底力」

定番ですが、再読。
冠詞は、分かったつもりになっても
頭をひねる局面に何度も出会います…
この本は概念を分かりやすく説明してくれていて
同業者の方たちの評価も高いです。


○「わかりやすい英語冠詞講義」

同じ本を繰り返し読むのも大切ですが
別の視点から書かれたものを読むと
はっと気づくことがあったりもするので、こちらも。

冠詞は、結局は大量に英文を読むことで
感覚を身につけるしかないのだろうなと思います。
洋書も読んではいますが、まだまだ絶対量が足りない。
仕事で読む文書は偏っているので…

洋書は、辞書がすぐ引けるようKindleで読むことが多いです。
今は「The Film Club」を読んでいます。
邦訳は「父と息子のフィルム・クラブ」
わりとマニアックな映画の知識が出てきて、
映画ファンならきっと楽しめそうな一冊です。


○「弁理士が基礎から教える特許翻訳のテクニック」

ふと手に取った一冊でしたが、
著者が翻訳者になるまでの個人的な背景などについて
詳しく書かれているところが興味深く面白かったです。
特許制度について頭の整理にもなります。
パリルート、PCT、拒絶査定などについて
流れを追って説明されています。
そして、特許庁やWIPOのサイトの活用法についても。

2011年の出版なので情報も新しめですし
入門編としてもオススメできそうな一冊です。
後半は、特許に頻出の表現について解説されているようで
まだ未読ですが復習のため目を通したいと思っています。


本は、「時間ができたら読もう」と思っていたら
絶対に読めないんですよね(自戒)。
時間は作る、というように心がけたいなと思っています。

とりあえずお風呂は読書タイム。
こんなのが大活躍です(^^)

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デスク周り買い物メモ

そういえばデスクトップPCを新調したのでした。
DELLのVostro 260S。Windows 7。
(お決まりの懸念事項、SST G1も問題なく動きます^^)
ワイドディスプレイでだいぶ快適になりました。
デュアルディスプレイにしたいかも…

到着してからも多忙でなかなか手をつけられず
一ヶ月以上たってやっとセッティング。
少々トラブりつつもすんなりお引っ越し。
やはりPCは二台ないと不安ですね。

今はクラウドにデータを置いておけるのが本当に便利。
昔に比べたらデータのやりとりもすんなり。
ブラウザの設定やらスケジュールやらも
自動で同期されてしまうし、
ATOKもpassportなのでそのまま引き継げてしまう。


そして、前から気になっていた電子辞書もポチリ。

衝動買いに近く、もう少し他のモデルも見るべきだったかな…
なんて思いつつも初日から大活躍しています。
もっと早く買えばよかった。

PCにつないで使うPASORAMAモードがメイン用途です。
なので、セイコーのこのシリーズしか考えていませんでした。
ランダムハウスや海野さんの辞書など
以前から持っているものも多くて二の足を踏んでいたのですが、
百科事典や国語辞典、理化学辞典、
その他専門用語辞書なども一気に引けてとっても快適です。
もちろん英英やリーダーズなども入ってます。

いざとなったら単独で持ち出せるし、
これで3万だなんて本当にお買い得。
動作もシンプルでサクサクです。


目の疲れもひどかったので、
巷でうわさのPC用メガネも少し前から試しています。
まぶしさが軽減されて、明らかに負担が減っている感じ。
お試しで安いものにしてみたけれど、これで十分かも。


いろんなオススメ情報をくださる同業者さんたちに感謝(^^)

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2012/10/17

リピート受注

たまには少し仕事の記録でも。

先日、特許英訳のトライアルに合格しました。
映像翻訳も含め和訳メインでやってきたので、
私にとってはちょっとしたチャレンジ。

でも、トライアルに合格しただけでは喜べないのですよね。
フリーになったころはそれだけで嬉しかったものですが
トライアルに合格しても仕事は来ない、なんてことは
日常茶飯事のようなので。
まだそういう経験はないのですが。

今回も、合格は嬉しかったものの
どうなるかな…と思っていました。
そんな中ですぐに初の打診。
短いものでしたが、初受注こそ本当のトライアル。
ドキドキしながら納品しました。

数日後、丁寧なフィードバックと共に翻訳を褒めていただき
新たな打診を2件いただきました。
英訳にはぜひフィールドを広げたいと思っていたので
久々に嬉しかったです。
既に他の仕事も入っていて
ちょっと厳しいスケジュールでしたがお受けしました。
ご縁を繋げていけたらいいな、と気を引き締め中。

このエージェントさんとは、
気持ち良くお付き合いできそうな予感がします。


字幕翻訳のほうでは、先日映画の本編を担当しました。
80分の作品で字幕が500枚弱という少なさ。
ラッキーでしたけど、逆のパターンも多々あります。
英語ではない言語の作品だったのでそれなりに苦労しましたが。
(こういう場合、英語のスクリプトや英語字幕を元に
日本語字幕をつけていきます)
もう一つ、英語以外の言語を
勉強したいと思った瞬間でもありました。


いろいろな考え方があると思いますが
一つの分野に固執せずいろいろなものにチャレンジするのも
決して悪くはないなと私は感じています。
いずれどこかに絞るにしても。

一生「翻訳」で食べていきたいと考えた場合、
やはり業界の動向を見極めることやリスクヘッジも大切です。
生かせる経験は生かした方が良いし、
すべての仕事に学びがあってどれもムダにはならない。
出版翻訳に携わる方々も、実務翻訳を兼ねている方は多いですし
様々なジャンルのビジネス文書を訳してしまう方々など
すごいなと思います。

これからも、興味のある分野には
可能な限りチャレンジしていきたいなと。
勉強に終わりはないですね…たまに気が遠くなりますが。
でも、だからこそ楽しいこの仕事。

インプットやリフレッシュのための
余裕の時間も大切にしたいです。
良い仕事をするためにも。
やっと、そういう時間を確保できるようになってきた気がします。

…と言いつつ、目先の仕事にしばらくは追われそうです。

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2012/10/09

JATアンソロジーに寄稿しました

9月30日の「世界翻訳の日」を記念し、私も会員となっているJAT(Japan Association of Translators)からアンソロジーが発行されました。

Photo

「Translator Perspectives/翻訳者の目線」と題された冊子の中では、59名の翻訳者が様々な視点から翻訳について語っており、非常に個性豊かで興味深く読み進めています。知人の文章も多いのですが、「あの方はこんなことを考えていたのか…」などという発見も楽しいです。

発行後はブログへの転載もOKとのことだったので、拙文ながら自分のものを載せておきます。この仕事を始めて6年、まだまだ学ぶことばかりで仕事に対する考え方も日々変化しているように思いますが、2012年現在の記録として。

諸先輩方に交じって大口たたいており冷や汗ものですが、自分なりに頑張っていきたいなと心を新たにしました。

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言葉を繋ぎ、人を繋ぐ


『バベル』という映画がある。国家間の摩擦をはじめとして、人間同士の間に往々にして立ちはだかる高い壁が描かれている。「言語を分かたれた人間たち」が右往左往し、時には誤解が生まれ途方に暮れる。壁を切り崩していくには、背景も含めて相手を理解した上で、心を伝える必要があるということがよく分かる。そのために言葉が果たす役割は非常に大きい。分かたれた言語の対象として、聴覚障害者が登場するのも興味深い。

字幕翻訳の仕事を始めて六年。小さな頃から外国映画を通して異国の文化に触れるのが大好きだった私にとっては、楽しい仕事だ。「映画字幕は翻訳ではない」と清水俊二氏も仰っていたとおり、字幕はいわゆる翻訳とは少し性質が異なる。厳しい字数制限があるため、会話の流れやストーリーのエッセンスを汲み取り、一つ一つの短いセリフに凝縮していく。書くのは文章ではない。そして映像が様々な要素を補完してくれる。

自分の文章力が落ちていると感じたのは東日本大震災の時だった。何かできることを、と思ってボランティア翻訳を引き受けたものの、自然な流れの文章を書くのにひどく苦労した。これで翻訳者といえるのかと自問自答した。様々な場面で、言葉が果たす役割の大きさを痛感した時期でもある。私にも、もっと実用的な専門分野があったら何か役に立てたかもしれない。こんな事態に対応できるだけの底力を身につけたいと思わされた出来事だった。

震災を機に、視野を広げて他分野にも挑戦し始めている。楽しいこと、やりたいことを仕事にしたいという思いから、求められること、必要とされることにも応えられるようになりたいという思いに変化しつつある。もっと自在に言葉を操れるように。相手を理解し、心や知識を伝え、様々な壁を取り払うような翻訳ができるようになりたい。それが時には危機を救い、文化を繋ぎ、果ては人を繋いでいくものなのだと感じている。

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2012/06/06

IJET-23広島に参加して (2)

余韻の残るうちに続きを…

○2日目

1コマ目-英日翻訳ワークショップ:コミュニケーションのための翻訳-翻訳文の「ながれ」について考える
実は、これは1~2コマ通しの内容だったのですが、諸事情により1コマしか聞けませんでした。JATの会員は後に録画を見られるはずなので、そちらをチェックしたいと思っています。JAT翻訳コンテストの課題文を取り上げて細かく解説していくもので、笑いもたくさん交えた楽しい講義でした。課題文以外にも、例えば原稿にある「in fact」が訳されていないということで訳抜けだ、という騒動になったお話なども。「in fact」を必ずしも「実際に」と訳すわけではない、英語のリズムでは必要な単語でも日本語のリズムでは省いて良い場合もある、などという具体例が多く挙げられました。

2コマ目の諸事情はこちら。

Okonomi

3コマ目-Evernoteのローカライズに関わったらIJET-23広島にたどりついた
なんと、スピーカーの中村氏の本業は歯科医師。趣味で、惚れ込んだアプリの日本語化をボランティアでやっているうちに、SNSでEvernoteのCEOとつながり、さらにその通訳をしていた関根マイク氏と知り合うことでIJETに招かれる…というSNSの無限の可能性も感じられるお話でした。自分が惚れこんだアプリだから、どうにかして日本にもその良さを浸透させたい、その思いだけで大量のテキストと格闘する日々。伝えたい思いがある、という翻訳の原点を垣間見た気がしました。そして思うだけでなく実行に移していくことで、何かが生まれつながっていく。仕事の効率化、収入を増やすための手段、そんなものとは対極の内容がとても新鮮でした。「同じことをやり続けていても未来はない」という言葉がとても印象に残っています。

4コマ目-翻訳会社本音トーク:グローバル市場における翻訳の品質管理
こちらも4~5コマ通しのパネルセッションだったのですが、どうしても5コマ目に聞きたいものが他にあったので、前半しか聞いていません。前半のみの印象という前提でいえば、片方の会社は主に自社の宣伝に終始。私の周囲は「何なのこれ?」と次第にざわざわしてくるほど。もう一方の会社は、具体的な数字を出しつつ率直な話をしてくれていたという印象です。

何より印象に残ったのは「雑だけどスピードのある翻訳者が一番の稼ぎ頭」というお話。後の飲み会では「雑な翻訳って一体どんなの?」としばし議論のネタになるほど、印象深い一言でした。日々、良い翻訳とは何かを考えている身にとっては、「雑な翻訳」の定義が理解しがたい。クライアントからスピードを求められる→上手い翻訳者はだいぶ先までスケジュールが埋まっている→雑な翻訳者に頼まざるをえない、という事情は分からなくもないのですが。「みんなが時間をかけて良い翻訳をする翻訳者になってしまったら困ります」と、これまた率直でした。それはそれで清々しかったです。後半はだいぶ盛り上がったようなので、これも後で録画をチェックしたいと思います。

5コマ目-「説明するけぇ よぉ聞きんさい」
こちらもスピーカーの北臺氏の本業は数学者。iPad発売時のビデオに感銘を受け、これを日本にも伝えたいと非公式な吹替え版を作成したところ、あっという間にネットで大評判に。標準語と広島弁で作ったのに、広島弁だけがスポットライトを浴びたとか…ユニークですものね。プレイベントでお会いしたときも面白い方だなーと思っていましたが、プレゼンも終始笑いをとりつつ大盛り上がりでした。やはりEvernoteのお話と同じく、「これを伝えたい!」という強い思いから生まれたもの。話者が「everyday」と言っているところに「変わるでぇ」という言葉をあてて、映像と音がぴったりだ!と悦に入ったといいますが、これは吹替え翻訳ではリップシンクと呼ばれる一つの技術。それを学校で習うわけでもなく、自然と追求している。できるだけ面白さをそのまま伝えたい、という思いがあれば、自ずとたどりつくものなのだ…と感銘を受けました。他にも「New York Times」が出てきたときに、こんなもの広島県民は読まない、と思って「中国新聞」に変えたら大受けだったとか。愛のある翻訳ですよね。

笑いっぱなしのプレゼンの最後に「one more thing...」と。ここで笑いがおきたものの、続く新作に泣かされてしまいました。北臺氏がその場でJonathan IveによるSteve Jobsの追悼スピーチを生吹替えしたのです。その録音バージョンが既にUPされています。スピーチ自体が良かったのはもちろん、淡々と広島弁で吹き替える北臺氏の姿から心底愛情が伝わってきたのでした。思いは人を動かし、それは連鎖していく。そんなことを感じました。


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真面目ぶって色々書いてきましたが、
今回はとても思い出深い初参加のIJETだったので
記録しておきたいなと。

1日には前夜祭があり、
会場近くのバーで100人以上が集まりました。
なんと、引っ張り出されて初めてダンスを経験しました(笑)
浴衣姿の方も大勢いらして、とても華やかで目にも楽しかったです。
ここで知り合えたことで、
次の日に話しかけやすかったという面もありました。

2日の夜はディナークルーズ。こちらはなんと約200人。
お酒が入ると次第に緊張もとけてきて
楽しいお喋りと綺麗な夜の景色を楽しみました。

Itsukushima

解散後は適当にグループに分かれて
お酒や珈琲、お好み焼き(!)など。
自由な雰囲気がとても良かった。まさにお祭り。
3日の夜も誘われるままに明け方まで飲んでしまいました。

ランチも前夜祭の前も、
思い思いに皆さん楽しまれていたと思います。
私も引っ越したばかりなので、
懐かしい関東の方々にお会いできて本当に嬉しいひとときでした。
別れ際、ちょっとうるっときてしまった…
(みんな優しすぎるんだもの!)

後半はちょっと酔っ払いつつ書いてしまいました。
きっと忘れられないイベントになると思います。

運営委員の方々には心からの拍手を!
JATは非営利団体です。
これだけのイベントをボランティアで作り上げるなんて
それこそ「思い」がなければできないのではないかと。
どうもありがとうございました。

最後に、ボロボロになったプログラム冊子の写真。
これ、本当に使いやすかったです。
裏表紙にプログラムの一覧があってすぐに確認できるし
メモのページも便利で活用させていただきました。
記念にとっておきます♪

Program

書き切れないことがたくさんありますが、
とにかく今はお会いできた皆さんにありがとう!と言いたいです。

そしてまた、いつかどこかで再会できることを
楽しみにしています(^-^)

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2012/06/05

IJET-23広島に参加して (1)

2012年6月2~3日、広島市にてIJET-23(第23回日英・英日翻訳国際会議)が開催されました。IJETは初参加だったのですが、勉強になるセッションがたくさんあるだけでなく、前夜祭やランチ、ディナークルーズを通して多くの方々と交流することができました。セッションはもちろん真剣に聞きましたが、その他の時間は堅苦しいことを抜きにして盛り上がり、まるでお祭りのような楽しい3日間でした。

もっとハードルの高いものかと思っていましたが、勉強中の方もいらっしゃいましたし、「仕事を獲得するためのネットワーキング」というだけでなく、「同業の知り合いが増えたらいいな」くらいの気持ちで気楽に参加しても良いのではないかなと思います。フリーランスは孤独ですしね。私はどちらかというと後者です。日本と海外で交互に開催されており、来年は6月1~2日にハワイで開催が決定しています。旅行の良いきっかけにもなりそう。

自分の聞いたセッションを簡単にメモしておきたいと思います。
IJET-23プログラム一覧

○1日目

1コマ目-基調講演「感性のマツダロードスター」
感性を大切にしつつ1台の車をどう作り上げていったか…翻訳とは直接関係のないお話でしたが、車の知識がほとんどない私にとっては新鮮で興味深かったです。ただ、「原子力はエネルギー資源の少ない日本にとって絶対に必要なものです」というくだりはどうしてもいただけなかった。まさか平和公園内の会議場でこんな話を聞くことになるとは思いも寄りませんでした。もちろん福島原発にも触れられ、福島県民を責められているようにも感じ、終盤は聞いているのが苦痛に。東と西との温度差を感じた一瞬でもありました。

2コマ目-特許翻訳ワンダーランド?!-No, it's a real world.
内容は基本的なものと聞いていましたが、広島にある会社の方がスピーカーだったのでこちらに。特許翻訳者に必要とされる適性やスキルを丁寧にお話してくださいました。最後に明細書の一部を使いワークショップのような流れになったのですが、時間切れに。具体例が入ってくるとグッと面白くなるので、このあたりをもっとじっくり聞きたかったなと少し残念でした。1時間というのは(お話が面白いと)あっという間ですね。

3コマ目-パネルセッション:翻訳の品質管理
この時間は他のコマに出ようと思っていたのですが、パネリストの1人が株式会社クロスランゲージの方だと気づき急遽こちらへ。そう、あの東北観光博サイトの誤訳騒動を引き起こした会社です。この話は出るのかな…と思っていたら冒頭ですぐに参加者からその件についてツッコミが入り、終始その話になった感がありました。会社としては「自動翻訳の精度については最初に伝えてあり、用語集を要求しても一度も貰えなかった、なので仕方がなかった」というようなお話でしたかね…この方が直接の担当者というわけではないのでお気の毒ではありますが、どうもすっきりしない一幕でした。

4コマ目-Pecha Kucha 法人化!
法人化するメリット、デメリットについてのパネルセッション。立場の違う方々が揃っていて面白かったです。法人化するとやはり信頼度は格段にアップする、と。特に女性だと主婦の片手間仕事と思われることもありますが、社長という肩書きがあるだけで相手の態度が変わるというお話には納得。1人では処理できない仕事量でも、他の人を雇ったり割り振ったりすることもできる。ただ、給与や税金の処理がやはり面倒そうだなという印象。まだ私自身は考えたことがありませんが、とても勉強になりました。

5コマ目-音声入力ソフト活用における2つの盲点
このコマ、とっても面白かったです。音声入力ソフトはほとんど使ったことがないのですが身近で日常的に活用している方もいるので、実演が見られるということでどんなものかな~と参加してみました。使用ソフトはドラゴンスピーチとアミボイスというもの。精度は年々上がっているようですが、英語と日本語でだいぶ差があるようです。日本語は漢字変換があるのでハードルが高いですね。例えば1パラグラフを一気に音声入力して、その後修正を入れていくわけですが、修正の手間によっては最初から入力してしまった方が早い。入力による負荷、腱鞘炎などのリスクを軽減するために使用しているはずなのに、結局はキーボードを多用することになる。もちろんソフトも学習していくわけですが、実質的に効率が上がるまでには年単位の時間がかかる、と。特に和訳に関しては、まだあまり現実的ではないのかなと感じました。ソフトの学習が進めば効率は1.3~3倍程度上がるそうです。ただ、スピーカーの方が携わる特許分野などではそうかもしれませんが、例えばニュース記事の翻訳など、毎回さまざまな新しい用語が登場する分野では厳しそうだな…と個人的に思いました。


簡単なメモ、と言いつつ何だか長くなってしまったので、2日目や交流パーティーについてはまた後日、書きたいと思います…と言いつつ力尽きませんように。

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2011/11/30

第21回JTF翻訳祭に行ってきました

個人としては去年初参加したJTF翻訳祭
今年は某メルマガの抽選に当たり無料でご招待いただきました(^^)v

会場に着いて朝イチから、
知財翻訳の講座をご一緒していた方々と意外な再会。
そして普段から交流のある同業の友人知人も続々と。
これだけでも、行って良かったなーと思ってしまう私です。

元勤務先だった会社が毎年出展していることもあり
去年は「翻訳プラザ」にいた時間が結構長かったのですが
今年はバタバタしていて全く立ち寄らずに終わってしまいました。
ちょっと心残りです。

ランチは久々にお会いした帽子屋さんを交え大人数でワイワイと。
(帽子屋さんの翻訳祭レポはこちら
おかげさまで、また新たな出会いがありました。

夜は10人前後で入れ替わり立ち替わり打ち上げ飲み会。
翻訳にかかわる立場や、分野なども全然違うメンバーで
あまり翻訳に関係ない話もたくさんしつつ楽しく〆ました。
広島や大阪からの方もいらっしゃって、
遠いはずなんだけど結構会ってるなーなんて思ったり(笑)
不思議な距離感です。

一年ぶりの翻訳祭。
一年ってあっという間だなーとしみじみ。
そして、たくさんの出会いと続いているご縁に感謝。

はっ、真面目な報告をしようと思いつつ、ついつい日記に。
「楽しい」「嬉しい」が原動力なもので。
雰囲気だけでも伝わればいいかなーと思います。
そして、「来年は行ってみようかな」と思う方がいらっしゃれば
嬉しいです(^-^)

セッションは、多数同時進行している中から
好きなものを聞きにいく形式です。(プログラム内容はこちら
去年は自分のフィールドである映像や特許の話を聞きましたが
今年は、なかなか聞けない分野の話を聞きたいなと思っていました。

私が聞いたのは以下。

******************************

○トラック6 セッション1
「新薬開発現場の担当者と翻訳会社経営者が語る、翻訳者の評価とは」(パネルディスカッション)

メディカルに限らず、どの分野にも通じる話も多く
クライアントと翻訳会社の本音バトルで面白かったです。
朝イチから熱いコマでした。
ちょっとどこまで書いていいのか分かりません(笑)

○トラック5 セッション2
「プロ翻訳者に聞く! 法律翻訳入門」

普段から仲良くしていただいてるキャシーさんの講演ということで
楽しみにしていました。
法律翻訳はまったく未知の世界でしたが、とても分かりやすくて
ところどころスライドに現れる大阪弁で笑いをとりつつ、あっという間。
今年から契約書の「不可抗力」の項目に
「放射能汚染」がよく出てくる、というお話も。なるほど…
音声入力で翻訳すると一日の作業時間が2時間ほど削れるなど
具体的なお話も興味津々でした。

○トラック1 セッション3
「品質に満足ですか~良い翻訳品質を腕組みせずに考える~」

こちらも、普段から交流のある齊藤氏の講演でした。
夜は飲み会でご一緒し、かなり緊張されていたそうですが
全然そんな風には見えず、質疑応答も盛り上がっていました。
顧客アンケートの分析の仕方や、
顧客からのクレームの具体例などとても興味深かったです。
ご本人のブログに他セッションも含めレポがあります。→こちら

○トラック3 セッション4
「メディカル翻訳者からみた、お付き合いしたい翻訳会社とは」

このコマは、特許も出版も気になってとても迷ったのですが
最近買った本の著者の方がスピーカーだったので
こちらを聞きにいきました。
コーディネーター向けとなっていましたが
翻訳者にとって有益な情報が盛りだくさんだったと思います。
眠気のピークだったはずが、すっかり目が覚めました。
「製薬企業は、薬で入る人と英語で入る人がいる。
どちらもできる人はすごく少ない。
両方満たすプロの作品が欲しいから翻訳会社に発注するわけで、
添削している暇はない。」
どの分野にも通じることだと思いますが、忘れられない一言です。

******************************


一部のセッションでは
詳しい実況をしてくださった方もいらっしゃいました。
こちらにまとめがありますので、興味があるかたはぜひ。
Togetter: JTF翻訳祭2011

だらだらと長くなってしまいましてすみません。
とても有意義で楽しい一日でした。
そしてお会いできた皆様にあらためて感謝です。

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2011/11/24

近況報告&IJET-23プレイベントin 広島

また久々の近況報告になってしまいました。
ゆるゆると。
あまり書かないでいると両親から連絡が…(^^;;

最近は仕事の合間にあちこち顔を出していました。
新しい分野の勉強を始めてみたり、
福島に帰省したり、同業の友人たちと那須旅行に行ったり…
三年前、岡山の仕事でお世話になった方と再会したり
いわき出身の同窓会をやったり。

昨日は翻訳仲間の赤ちゃんに会ってきました♪
抱っこしたまま連れて帰りたいくらい可愛かった~。
出演:私の手。さあ、どちらでしょう(笑)
Hands

大先輩の翻訳者さんのブログです。
素敵な写真をありがとうございます。

記録しておきたいことばかりなのですが、なかなか追いつかず…。
ブログも整理しなければと思ってはいるのですが。
思うだけで、はや数年。


いろいろある中でも特に思い出深いのが広島に行ったことです。
勉強半分、旅半分でしたが、
今まで行った中で一番印象的で美しい町でした。

レポートを書かせていただいたので
興味のある方は覗いてみてください。
前回の大阪に続き、来年開催されるIJET-23のプレイベントです。
http://ijet.jat.org/news/participants_report_kat_translation_seminar_in_hiroshima

書ききれないこともたくさんありましたが、
いろいろな意味で忘れがたい旅となった広島行きでした。

翻訳セミナーの内容に興味がある方は、
運営委員の緒方亮さんが書かれたこちらの詳細なレポートをぜひ。
http://ijet.jat.org/news/report_kat_translation_seminar_in_hiroshima/

今後もまだ関西や四国、九州でも
プレイベントが開催されるようです。
気軽に覗いてみて、雰囲気を知るのも楽しいかと思います。
勉強中の方などもいらしてましたよ。


震災後、ボランティア翻訳に関わったりする中で
仕事に関してもいろいろと考えるところがありました。
様々な出会いのおかげもあると思いますが。
少しずつ行動に移しつつ、成長したいと思う毎日です。

映画などはなかなか観る気分になれなかったのですが
最近、ちょっとずつ復活しています。
「わたしを離さないで」は印象深い作品だったな。

iPhoneより更新してますが、うまくいきますように。

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