「ヒアアフター」
クリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」。
ちょこっとネタバレあります。
死者と話ができる男の話…と聞くと
オカルトチックな作品に思えますが、そうでもないです。
「スピリチュアルなことに興味のある方にオススメ」かというと
そんなこともないような。
普通の人間ドラマとして堪能しました。
でも、わりと感想は賛否両論あるようですね。
いろいろな感想を覗いてみて、私はこの映画を
ちっとも冷静に観られていなかったな、と実感しました。
終始どっぷりと少年に感情移入していましたし。
うーん。
いつも冷静じゃないような気もするけど(笑)。
とにかく、亡くなった兄と話したい…という少年の気持ちが
痛いほどに分かって。
もうボロボロ涙が出てきて、なかなか席を立てなかった。
数年前に亡くなった若き友人を思い出していました。
私は、彼女が死ぬほどの病気だとは全然知らなかった。
彼女は病状を誰にも話さなかったから。
入院中の彼女とメールのやりとりなどしながら、
ちょっと意見のすれ違いがあったりして、
私は少しきついことも書いたりしていたと思う。
そんな中、ある日「姉は亡くなりました」と妹さんからメールがきた。
頭が真っ白になり、数日間は何をしていても涙があふれてきた。
電車に乗っていても涙があふれて止まらないし
仕事をしながらもずっと涙を流していた。
彼女は、とても思いやりにあふれた遺書を残してくれたのだけど
私の最後のメールはどうだったか。
もっともっと、言いたいことはたくさんあったのに。
もう届かない。
行き場のない思い。
そんなものを、あそこまで感じたのは初めてだった。
届かない手紙を、私は書いた。
言いたかったこと、伝えたかったことをすべて
書かずにはいられなかった。
でも、出せない。
今もこうして思い出すだけで涙が止まらない。
ラストの少年の悲痛な叫びは私の叫びそのものだった。
「話したいことがたくさんあるんだよ。ねえ、お願い」
でも、この作品を見て少し救われた気がした。
死は生の延長線上にあるだけで少しも怖いことじゃない、
と思わせてくれる、とても優しい一作。
私も、そして誰もがいずれ行き着く場所なのだ。
伝えられなかった言葉、そしてもう永遠に伝えられない言葉。
その重みは決して忘れられないけれど。
たとえ遠く離れていても、喧嘩しても、すれ違っても、
生きてさえいれば言葉は交わせる。
それがどれだけ幸せなことか、
噛みしめながら生きていきたいと、しみじみ思う。
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