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2011年2月の記事

2011/02/28

「ヒアアフター」

クリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」。
ちょこっとネタバレあります。


死者と話ができる男の話…と聞くと
オカルトチックな作品に思えますが、そうでもないです。
「スピリチュアルなことに興味のある方にオススメ」かというと
そんなこともないような。

普通の人間ドラマとして堪能しました。
でも、わりと感想は賛否両論あるようですね。
いろいろな感想を覗いてみて、私はこの映画を
ちっとも冷静に観られていなかったな、と実感しました。
終始どっぷりと少年に感情移入していましたし。

うーん。
いつも冷静じゃないような気もするけど(笑)。

とにかく、亡くなった兄と話したい…という少年の気持ちが
痛いほどに分かって。
もうボロボロ涙が出てきて、なかなか席を立てなかった。

数年前に亡くなった若き友人を思い出していました。


私は、彼女が死ぬほどの病気だとは全然知らなかった。
彼女は病状を誰にも話さなかったから。
入院中の彼女とメールのやりとりなどしながら、
ちょっと意見のすれ違いがあったりして、
私は少しきついことも書いたりしていたと思う。

そんな中、ある日「姉は亡くなりました」と妹さんからメールがきた。

頭が真っ白になり、数日間は何をしていても涙があふれてきた。
電車に乗っていても涙があふれて止まらないし
仕事をしながらもずっと涙を流していた。

彼女は、とても思いやりにあふれた遺書を残してくれたのだけど
私の最後のメールはどうだったか。
もっともっと、言いたいことはたくさんあったのに。
もう届かない。

行き場のない思い。
そんなものを、あそこまで感じたのは初めてだった。

届かない手紙を、私は書いた。
言いたかったこと、伝えたかったことをすべて
書かずにはいられなかった。

でも、出せない。
今もこうして思い出すだけで涙が止まらない。


ラストの少年の悲痛な叫びは私の叫びそのものだった。
「話したいことがたくさんあるんだよ。ねえ、お願い」


でも、この作品を見て少し救われた気がした。
死は生の延長線上にあるだけで少しも怖いことじゃない、
と思わせてくれる、とても優しい一作。
私も、そして誰もがいずれ行き着く場所なのだ。

伝えられなかった言葉、そしてもう永遠に伝えられない言葉。
その重みは決して忘れられないけれど。

たとえ遠く離れていても、喧嘩しても、すれ違っても、
生きてさえいれば言葉は交わせる。
それがどれだけ幸せなことか、
噛みしめながら生きていきたいと、しみじみ思う。

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2011/02/24

EAST ASIA

最近、youtubeで見つけた動画です。
ライブと書いてありますが、おそらく「夜会」でしょうか。
中島みゆきさんの名曲「EAST ASIA」。
画質は悪いですが素晴らしいステージです。
最後は「泣かないでアマテラス」「二隻の舟」へとつながっていきます。


「力だけで心まで縛れはしない」

この歌詞が痛いほど突き刺さる今日この頃。
世界情勢に目を向けてはいるつもりでも
所詮、平和な日本に住んでいる私には何も見えていないでしょうね。

「世界の場所を教える地図は
 誰でも自分が真ん中だと言い張る」

世界で次々に大変なことが起きていても
自分は身の回りの小さなことでくよくよ悩んでばかり。
でも、自分や身近な人々の幸せがまず大切というのもまた真実。

くにの名はEast Asia…黒い瞳の国。
国境を感じさせないこの曲を聴きながら
ひとはひとでしかない、ということをしみじみ感じています。


あまりに大きな歴史のうねりに、
この余波がどこまで続いていくのか見当もつきません。
どうか、これ以上大切ないのちが奪われないように
ただただ祈るばかりです。


そしてニュージーランドの皆様。
行方不明の方々の救出が少しでも早く進みますように。
一日も早い復興を、心からお祈りしております。

***********************************************
こちらからニュージーランドへ募金できます。

ニュージーランド地震救援金(日本赤十字社)
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2011/02/18

「わたしを離さないで」

もうすぐ映画が公開される予定の
カズオ・イシグロ 著 「わたしを離さないで」。
原作の評判がとても良かったので手に取りました。

引き込まれて一気に読んでしまったのですが
内容について触れるのが非常に難しいです。
あとがきによれば、イシグロ氏は
「別に帯でネタばらししても構わない」とまで言っているそうで
確かにオチなどを楽しむのが目的の作品ではないと思います。

それでも、何も知らずに読み進むあの緊張感は
ぜひ皆さんに味わっていただきたいと思います。
ですので、内容については触れません。
(映画の予告を見るとほぼ分かってしまいますが…)

読み終わった後は、圧倒されてしまって
しばらく何もする気が起こりませんでした。

言葉にしづらい感情とか、心の機微というものを
文字という彫刻刀で丹念に彫りおこしていくような文章。
土屋政雄さんの流れるような翻訳が
また素晴らしいと感じます。

ラストシーンでは私もある風景の中にいました。
風を感じました。
今もその景色が鮮明にまぶたの裏に焼き付いていますし
思い出すと静かに涙がこぼれます。

一見、特殊な世界を描いているようでありながら
とても普遍的なものを描いている物語でもあります。

ぜひ、映画公開の前にご一読を。


「わたしを離さないで」 映画公式サイト

予告が見られます。
シャーロット・ランプリングが懐かしいです。
音楽担当はレイチェル・ポートマン。
「ショコラ」の方ですね。楽しみです。

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