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2007/04/24

「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」

月曜日納期の映画本編は無事に納品!
細部が気になって見直ししているうちに、徹夜してしまいました。
今の私の力は全部出し切れたはず・・・です。

朝寝て、お昼に起きて、近所の川べりを散歩した後、
読みたかった本を立て続けに2冊読んでしまいました。
そのうちの1冊が、タイトルの本です。

433403392X字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ
太田 直子
光文社 2007-02-16

by G-Tools

太田直子さんも、劇場映画で頻繁に見かける第一人者。
今までに1000本以上手がけているとのこと!

軽快な文章はとても読みやすく、面白くて、
あっという間に読み切ってしまいました。
結構「ぶっちゃけ話」っぽいものが多いので、すごく参考になります。
また、太田さんの1日あたりの字幕翻訳枚数などにも
触れられています。
(自分がそんなに遅くはないと知り、ホッとしました)

一番ページを割かれているのは、放送禁止用語ですかね。
うんうん、とうなずける話もたくさん。
また、「泣かせるため」にセリフが操作されることがある、ということは
初めて知りました。
確かに、それはいただけません。

「ロード・オブ・ザ・リング」の誤訳騒動にも触れられていました。
私もあの騒動は異常だと思い、戸田さんに同情しているのですが
太田さんも書かれています。
「ストーリーをまったく知らない人が一度だけその映画をみたとき、
それなりに楽しめるように配慮」するのが、プロの姿だと。
原作主義の細かな用語のこだわりには、
付き合っていられないというのが本音だと。
これは、まったくもってその通りだと思います。
原作小説と映画は、別物と考えるべきではないでしょうか。

で、一カ所ツッコミたいところが(^-^;)
先日、私も「字幕翻訳の手順」で書いた話なのですが、
スポッティングについて。

「とはいえ、映画一作品で平均千ほどもあるせりふを、
いちいち翻訳者がストップウォッチで測っていたら
仕事にならない。」

という一文がありまして。
SSTを使うにしろ、1600ものせりふをスポッティングした身としては
切なくなりました(半分冗談ですけど)。
最近は、スポッティングできる翻訳者が
当たり前になりつつあります。
映画もフィルムからデジタルに移行しているので、
劇場映画もおそらくは、
そういう方向に向かうのではないかと思います。

それで単価が上がるのならいいのですが、
作業が増えても単価は下がる一方のようでして。
スキルアップをはかりつつ、収入を上げるためには
いろんなことにトライしなければいけないようです。

まずは目の前のことを確実にこなしていこう。
そんな風に思いました。

翻訳者でなくとも、
字幕で映画を見るのが好きな方にも楽しめる本だと思います。

****************************

なんと、同じ時にブログ仲間のJulietさんも
この本について書かれていましたo(^-^)o

http://juliet1411.blog33.fc2.com/blog-entry-234.html

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コメント

トラックバックありがとうございました&映画本編無事納品お疲れ様でした。

この本は、映像翻訳を勉強中の者としてとても勉強になりました。内容も思わず声を出して笑ってしまうほど面白かったですし。

それにしても、同時期にうっちーさんも同じ本を読んでいたとは、ビックリしました(笑)

投稿: Juliet | 2007/04/24 23:58

私は、年間50本以上の映画を劇場で観ます。最近は邦画も見ますが、以前はほぼ100%が洋画でした。
手がけている本数が多いせいかもしれませんが、戸田さんの誤訳は確かに多いですよ。映画を観ていて「あれ、字幕が変だ」と思うと、戸田さんである確率が高いです。「北極大陸」のような常識で分かるミスや、「内側」と「外側」を取り違える単純ミスなどです。その多くは、私の語学力でも分かるほど単純で、なおかつ、映像を見ていれば間違えようのないケアレスミスですね。原作至上主義に同調する必要はないでしょうが、いきなり犯人と被害者が入れ替わってしまったりするのは、許容範囲を超えています。あまり字幕がひどいと、洋画離れが進むと思います。

見直せばすぐに分かるようなミスが多いと言うことは、忙しすぎて納品前にチェックする時間がないとか、配給会社がチェックしようとしないとか、そういった問題があるのではないでしょうか。

投稿: Yoshino | 2007/04/25 06:05

>Julietさん
私もびっくりしましたよ~。
偶然ですね!
でも、本当に面白い本でした。
時間をおいて、また読み返したいと思います。

>Yoshinoさん
戸田さんの誤訳は私も何度か気付いたことがあります。
戸田さんに限ったことでもないのですが、
戸田さんはやはり手がけている本数が多いですから、
相対的に多くなるのは当然かもしれません。
英語が分からなくとも分かるような、
明らかにおかしい誤訳も確かにありました。

ただ、そういうのを見たときに、
翻訳チェックの仕事をしていた身としては
やはりチェック体制にも疑問がわきます。
一度、通して見れば気付きそうなものなのに・・・と。
一介の翻訳者に全責任を負わせるのは
いかがなものかと思うのですが、
その辺が「名前が出る仕事」の重圧かもしれません。

上で触れているのは
「ロード・オブ・ザ・リング」の騒動についてですが、
誤訳以外の部分で騒がれている部分も多かったです。
誤訳云々以前に、
字幕の制約をあまりに知らない論争に辟易して、
途中で見るのをやめました。

手放しで戸田さんを「神」だとは思っていません。
「~かもだ」「~を?」という独特の言い回しは、
私ならおそらく使いませんし、
講座では禁止されていました。

ただ、「うまいなー」と思うことが多いのも確かなのです。
ネームバリューだけで仕事がまわっているわけでは
決してないと思います。

仕事をするとき、誤訳の恐れは常にあります。
徹夜して見直しをしても、
「100%完璧だ」とは到底思えません。
ネイティブにしか分からないニュアンスも
たくさんあることでしょう。

その限界の中で、できる限り良い字幕を作っていけるように
私も気を引き締めて努力していきたいと思います。

投稿: うっちー | 2007/04/25 07:26

>Yoshinoさん

追伸ですが、戸田さんのように
「日米同時公開」のような大作を手がけていると、
翻訳時点で映像が来ていなかったりですとか、
翻訳の途中で二稿、三稿と脚本が変更されたりとか、
通常の手順とは大きく違ってくる場合があるようです。
情報が漏れないようにハリウッドに出向いて翻訳したり、
その後で編集に変更が入ったり。

今は海賊版の問題もあるので、
映像をビデオでもらってゆっくり見るということもできず、
一度試写室で見た記憶を頼りに翻訳するというのが
通常のやり方でもあります。

納期の厳しさもさることながら、
こういう状況になってしまうと
やはり配給会社のフォローも
かなり重要なのではないかなーと思った次第です。
戸田さん擁護のようになってしまい恐縮なのですが・・・

投稿: うっちー | 2007/04/25 07:36

うっちーさん
お疲れさまでした
がんばれましたね~

たぶん見直しに時間をかけて居られるのだろうと
思っていました

心残りのないお仕事が出来てよかったですね
うっちーさんのブログを読ませていただいて
今まで知らずに過ごしていたことを
いろいろ教えられたり
専門家のお話が聞けて楽しいです
いっそう映画が好きになります

作品が待たれますわ~

投稿: あけみ | 2007/04/25 09:19

そうでしたか.....。
私はてっきり、完成品のビデオと、完成稿の脚本が一緒に送られてくるのだとばかり思っていました。戸田さんはもちろん、他の翻訳家の方に対する考えも大きく改めなければいけませんね。同じ翻訳家であるうっちーさんにも、不快な思いをさせてしまったらごめんなさい。

話が脇にそれますが、私も字幕に「完璧」は無いと思います。スターウォーズの「フォース」を「理力」と訳すことは、今現在の客層の英語力や、スターウォーズという世界観が浸透している状況を考えれば不適切だと思いますが、公開当時の状況では苦肉の訳だったと思います。「その時点でのマジョリティ」を対象により良いものを求めていく、という形になるのかもしれません。
「ロード・オブ・ザ・リング」の騒動については、映画の制作サイドと配給会社が、どういった客層をマジョリティとして考えるのかなどを、事前にきちんと詰めていれば良かったのではないかとも思います。とても有名な物語の映画化ですから、制約のある字幕の中で、どの程度の分かりやすさを求めるか、どの程度まで原語のニュアンスを生かすかなど、実際の翻訳に携わる方には悩み所満載の作品なのだろうと思います。

字幕は外国映画を見る上で、この上なく大切なもの。うっちーさんのブログを通して様々な制約や窮状を知りましたが、お客さんにとって、それは提供側の問題。やはり観客は、映画は劇場で上映される時点で完全なものであってほしいと願うでしょう。映画は大勢の力が集まって出来るもの。本来なら、照明や音楽や撮影と同様、字幕も映画製作の一部門として取り込んで欲しいぐらいのポジションだと思います。配給会社による一種のポスプロとして、十分な時間や資料の提供がなされないという現状が、少しでも改善されていくと良いですね。うっちーさんの力で、制度や制約による溝を少しでも埋めてください。

投稿: Yoshino | 2007/04/25 19:07

>あけみさん
私も、実際に仕事をしていく中で学ぶことばかりです。
学ぶ姿勢を忘れたらおしまいですね。
新しいことを知るのは楽しいですし、
その楽しさをこういう場で分かち合えたらな~と
思っていますo(^-^)o
これからもどうぞよろしくお願いします。

>Yoshinoさん
不快などと、とんでもないです!
私が上に書いた話はあくまでも制作サイドの都合であり、
観客へのエクスキューズにならないのは百も承知です。
それゆえに、こういった場所で
こっそり愚痴る形になってしまうのですが・・・(苦笑)
そうでなければ「字幕罵倒サイト」に乗り込み、
侃侃諤諤の議論を繰り広げていることでしょう。

字幕をもっと大切なものと認識して、
十分な時間と手間をかけてほしいというのは
私も常に思っています。
時代はどんどん逆行しているようですが、
今自分にできることを常に精一杯やっていくことで、
少しでも業界を変えて行けたら本望です。

ちなみに私はスターウォーズの「理力」は、
今使われないのがもったいないくらい名訳だと思います。
やっぱり日本語が好きですね~。

投稿: うっちー | 2007/04/25 21:25

通りがかりで失礼しますが・・・

>誤訳云々以前に、字幕の制約をあまりに知らない論争に辟易して、途中で見るのをやめました

どのような議論を見ていたのか存じませんが、もし途中で見るのをやめたのでしたら、「異常」などと批判する前に、きちんと調べてから書くべきではないでしょうか? この経緯については、ネット上で公されている資料がたくさんあるのですから・・・。

http://miyako.cool.ne.jp/LOTR/think/jimaku.html#2

太田さんのこの本は、まったく事実に基づく伝聞を書いているのです。実際に映画ファンに要望を出したグループは原作主義どころか、当初からの戸田さんが監修者を「うるさい原作ファン」と映画雑誌のコラムなどで揶揄していたことなどもあり、原作ファンではなく「映画作品のファン」というスタンスを取っていました。むしろ原作ファンを排除するような方たちでした。

また批判運動の先頭にたった人たちだけでなく、字幕改善を訴えた人たちが共通して問題としていたのは、けっして原作と違う訳だからというのではなく、例えば似た名前のキャラクター名を混同してみたり、「lost king of Gondor」がなぜか「失われた王国」となってみたり、現役の執政者を亡き者呼ばわりしてみたり、太田さんがこの本で散々指摘されているようなキャラクターに余計な色をつけたり、といったことですよ。

字幕翻訳者の方々のお決まりの言い訳「字数制限」を回避すべく、戸田さんの字幕の字数を守って代替案を作成して、映画会社に提出しています。そして実際に、1作目のDVDではその代替案のうち全部ではありませんが、かなりのものが採用されています。2作目3作目では、その「ファンをなだめた」とされる製作部長さんが、批判運動グループを呼び、チェックをしてもらっています。

戸田さんも、講演会などで「原作ファンがわめいたから、固有名詞の訳で苦労した」と繰り返しておられる。太田さんはエピソードを捏造。あえて「異常」という言葉を使わせていただくなら、字幕翻訳家の方々の対応こそ「異常」といわざるを得ないと思います。

投稿: Kath | 2007/04/26 03:06

>Kathさん

初めまして。
コメントをどうもありがとうございました。

「異常」という言葉がいきすぎであったならば、
謝罪いたします。
あくまでも私の主観でしかありません。
字幕翻訳家の対応が「異常」と言われても、
反論する気もございません。
それも一つの主観でしょうから。

また、完全な「誤訳」を擁護する気もございません。

リンク先も見させていただきました。
活動されている方たちを否定する気もございません。
争う気もまったくありません。

私は、私にできることを精一杯やっていくだけです。

一作品について
何年もかけて論争することができる立場の方もいれば、
歴史ある作品を
5日間で処理しなければならない立場の方もいる。
どちらにも言い分はあるでしょうし、
それについての議論をする気は私はありません。
不毛だと感じるからです。

こういった活動で字幕が改善されていくのならば、
それはそれで良いことだと思います。
どうぞ頑張ってください。

また、太田さんの書かれていることが捏造かどうかは
私には判断できないことですので、
コメントは控えさせていただきます。

投稿: うっちー | 2007/04/26 04:26

うっちーさん
おはようございます

なにか厭なお話でしたね~
プロとなるとむずかしいことも
多いことを知りました
でも、うっちーさんの対応は爽やかです

生まれも育ちも違う他人同士が
関わって生きるのですから
いろんな場面での価値観の違いは
避けようがないのでしょうし
さまざまな考え方があるでしょう

白鳥の胸を濡らさず争えり

自分の考え方に誇りを持って
望みのお仕事を頑張られて
楽しんで欲しいと思います

投稿: あけみ | 2007/04/28 05:48

>あけみさん
どうもありがとうございます。
ほんとブログ閉じようかと思うこともありますけど、
なんとか続けてこられたのは、あけみさん達のおかげです。

ネットって言うのは怖いです。
匿名だから、通常ではあり得ないケンカを
いきなりふっかけられることもありますしね。
そのケンカを買ってしまっては収拾がつかなくなるので
対応が難しいです。

ほんとは色々言いたいこともありますが
もっと別のことにエネルギーを向けたいと思います。
いつもありがとうございます。

投稿: うっちー | 2007/04/28 18:54

私もこの本を今日読みました。コメントのなかにあったリンクには携帯から閲覧しているため見れませんでしたが、私はうっちーさんのこのページはたいへん面白いと思いますのでどうか頑張ってください!
PCをもつ友人のうちでネットをみさせてもらっているのですが、そのうちのお気に入りにこのサイトが入っていてここを知りました。以後勝手に楽しませてもらってます。ネットはいやな思いもたくさんあるだろうけど、私のような支援者もいるので頑張ってください。

投稿: ナル | 2007/06/26 01:09

>ナルさん
お友達のお気に入りにここが入っていたとのこと、
恐縮しながらも嬉しい気持ちでいっぱいです。
なかなか更新もままならない上に、
内容もかなり気ままな日記なのですが、
楽しんでいただけているようでしたら良かったです。

ネットは顔が見えない分、怖いこともありますが
嬉しい出会いもたくさんあります。
こうしてコメントくださる方がいる以上、
やっぱり続けていきたいなと思います。
ありがとうございます。

投稿: うっちー | 2007/06/28 08:54

うっちー様

はじめまして。すーさんのブログからお邪魔いたしました。下っ端字幕翻訳者の ありちゅん と申します。どうぞよろしくお願いいたします。実は私もこの本を一気読み(笑)し、ブログに書いたりしておりました。私もうっちーさんのおっしゃりたいこと、痛いほど分かります。うっちーさんの真摯な態度を拝見し、エネルギーをいただきました。ありがとうございます。私も在宅翻訳者なので、ずーっとパソコンの前で一人ぼっち。ネット徘徊が趣味です。同じココログつながり、どうぞよろしくお願いいたします。また遊びによらせてくださいね。

投稿: ありちゅん | 2007/07/26 21:32

>ありちゅんさん

こんにちは、初めまして。
ご訪問、ありがとうございます。
同業者の方との出会いは嬉しい限りです。
すーさんはフランス語、ありちゅんさんはドイツ語、
いや~なんかちょっと羨ましいですね(笑)。

最近ごたごたしており、また更新が滞っております。
にもかかわらず、読んでいただいてありがとうございました。
ありちゅんさんのブログものぞかせていただきました。
またゆっくりと、少しずつ過去ログも拝見させていただきますね。

これからも末永く、どうぞよろしくお願いいたします。
オススメ本などありましたら、また教えてくださいませ。

投稿: うっちー | 2007/07/27 12:50

久しぶりのコメントを失礼いたします。
事情を知っている人間からのごく当たり前の指摘のつもりだったのを「通常ではありえない反応」などと切り捨てて、まるでアラシのような扱いをされたことに、正直言いまして、この方に何を説明してもダメだなと思っておりました。

もうごらんになっているかもしれませんが「通訳翻訳ジャーナル」のコラム内で太田氏ご自身が「伝聞のまま書いてしまった」ということで、謝罪されています。なぜあの映画のファンが、この本やうっちーさんの日記に傷つき不快に思ったのか、一方で太田氏の真摯な姿勢に安堵したのかご理解いただけるんじゃないかと思います。

投稿: Kath | 2007/09/28 01:19

>Kathさん
このブログには、今までいろいろな方が来られました。
正直、アラシのような方も何人かいらっしゃいましたし、

>「通常ではありえない反応」

というのは、それらをひっくるめた経験を指したものでして、
kathさん個人にあてたものではありません。

繰り返しになりますが、ここで議論をする気はございません。
「どうぞ頑張ってください」
というのは皮肉でもなんでもなく、本音です。

>この方に何を説明してもダメだな

とおっしゃいますが、
同じ言葉をそっくりお返しします。

>一作品について
>何年もかけて論争することができる立場の方もいれば、
>歴史ある作品を
>5日間で処理しなければならない立場の方もいる。

これが私の言いたいことのすべてです。

最後に、私もあの映画のファンだということを
申しそえておきます。

投稿: うっちー | 2007/09/28 01:31

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