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2006/04/02

「クラッシュ」

ロスで起きる交通事故をめぐる人間模様--。

「クラッシュってどんな映画?」と聞いたときに、返って来る答えは、
大体このようなものでした。

これじゃ全然内容がわからなくて、
観にいこうかどうか迷っていたときに、アカデミー作品賞を受賞。
それじゃ、ということでGO!

確かに、一言で言えるストーリー映画ではないです。
アンサンブル映画と言えばいいのでしょうか。
いわゆる、群像劇。

私は実は群像劇があまり得意ではないです。
登場人物が多くて、いろんなエピソードが盛り込まれると
すぐに混乱してしまう。

けれど、この映画は全てがスッと頭に入ってきました。
かなり登場人物は多く、入り組んでいるのに、見せ方が抜群に上手い。
脚本、そして編集の力なのでしょうか。

そして何よりも、大きなテーマとして「人種差別」が扱われています。
ここまですごいのか、という、日本人には想像し難い差別社会。
黒人・白人だけではなく、中国人やイラン人までもが登場します。

黒人の若い男のセリフが印象的でした。
「黒人が黒人を差別しないとでも思ってるのか?」

これは、私がタイを旅行したときにも強く感じたこと。
高級ホテルや高級レストランでは、
白人に対する態度と私たちに対する態度が、あからさまに違いました。

そしてまた、日本人を見ても、
アメリカほど目に見えて酷い行動はなくとも、
同じアジア人である中国人や韓国人に対する
差別意識を感じることが多々あります。
タイやベトナムも皆同じアジアでしょ、と言うと
向きになって怒り出す人すらいます。
滑稽ですね。

日本人って、アジア内においては自意識が白人って感じがします。

色々なことを考えさせられながら、1つ1つのエピソードを堪能しました。
涙が溢れてしまうシーンも多々あり、
胸をえぐられるような、リアルなエピソードが積み重ねられています。

そんな中で、ほっとさせてくれるエピソード、
「妖精さんのマント」・・・これは最高のお気に入り。

監督のポール・ハギスは、昨年アカデミー賞の主要部門をさらった
「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家としてデビューされた方。
関わった作品が2年連続作品賞受賞って、すごいですよねぇ。

この映画は、監督自らが黒人にカージャックされた経験から生まれたそうです。
しかし、そこでカージャックする側の立場に立った映画を作るところが、
やはり凡人とは違う所以なんだろうなと思います。

この映画を観たあと、強く感じたのは
「人は一人では生きていけないのだな」という平凡なこと。
平凡だけど、都会にいると忘れがちで、なかなか実感しないことです。

この映画の中で起こる人種間の衝突(crash)も、
結局は人種ばかりが原因ではなく、「他者に対する警戒心・不信感」であり、
そう考えると日本でも十分共感を呼べる映画なんですよね。

地下鉄に乗っていて、「あの袋が怪しい」とサリン事件を思い出したり、
交差点を渡っていて、「いきなり刺されたらどうしよう」と思ったり、
そんな自分の日常を私も思い出しました。

俳優陣の演技が、皆素晴らしかったです。
特に、すっごい嫌な奴として登場するマット・ディロンの演技が素晴らしく、
時の流れを感じました。
私が小学校の頃観た、「アウトサイダー」のころは
すらっとした青春スター、アイドルという感じだったんですけどね。
消えて行くことなく、今やアカデミー賞にノミネートされる存在になるとは。

同じ「アウトサイダー」に出ていたダイアン・レインも、今や演技派熟女。
その頃好きだったジェニファー・コネリーも、一時期はもうだめかと思ったのに
数年前にアカデミー賞を受賞。
「フェリスはある朝突然に」の青春アイドル、マシュー・ブロデリックも、
今は舞台を中心に活躍しながら「プロデューサーズ」の映画化で注目されて・・・
やはり消えたのかと思っていたブルック・シールズは、
今度ブロードウェイの舞台「シカゴ」でロキシー役を演じるというし。

なんだか、私が映画に夢中になり始めた頃のアイドルたちが、
アイドルではなく演技派俳優として存在していることが、
驚きと共に嬉しさを運んでくれます。
その裏にあるであろう並々ならぬ努力を想像すると、
自分も頑張ろうと思えるのです。

なんだか色んなことに思いを馳せてしまいましたが、
大満足の映画でした。
作品賞、納得です。

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コメント

うっちーさんの日記読んで、
クラッシュ見てみたいなーって思ったと
同時に、うっちーさんの国語力って
すごいなぁと関心してしまいました☆
言葉の選び方とか、さすがです。
たくさん文章を読んでる感じがします。


>日本人って、アジア内においては自意識が白人って感じがします。


みんながみんなそうではないけれど、
残念ながら、そういう感じ方をしてる人が
いることも確かですね。。
当たり前のことだけど、奢らず謙虚に
公平な目で人を見るのって、難しい。
ヘンな事件ばっかりニュースで
耳にしますし・・・

けど、少なくとも自分は色のついていない
メガネで世の中を見れる人でいたいと
思いました。


って。ちょっとマジメコメントでしたw

投稿: えか | 2006/04/04 00:24

>えか

コメント、どうもありがとう。
マジメなのも大歓迎です。

言葉の選び方って難しいよね。
私もネットで文章を書くようになって数年経つけれど、
今までに何度も訪問者の方と揉めたことがあります。
考え方の違いもあれば、誤解のときもあったり。

だから、無難な言葉でまとめるのが一番平和なんだけど、
あえて「これだけは言っておきたい」というものがある時は、
かなりの勇気を出してキツイ言葉を使ったりします。

えかは褒めてくれてるけど、
基本的に私は言葉がキツイのです。
これでも、ネットではかなり気をつかってるんだけどね(^-^;)

色眼鏡で世の中を見ないというのは、
本当に難しいことだなあと実感します。

ここ最近、立て続けに重い映画を観ていて
「ミュンヘン」(←テロ)
「クラッシュ」(←人種差別)
「ブロークバック・マウンテン」(←同性愛)
特に「ブローク・・・」などでは、
自分の中に潜む偏見に気づかされて。

自己嫌悪に陥ると共に、
もっと世の中のことを知ってニュートラルな人間になりたいと
心から思うのでした。

投稿: うっちー | 2006/04/05 12:00

こんばんは。
『クラッシュ』、本当にいい映画でした。
差別が一方的なものでなく、
多方向、複線的で錯綜しているものだと
いう事を分かり易く描いていました。
日本人もまた他人事とは言っていられない、
そんな気がしてしまいます。

ところで、先程、こちらにトラバさせて
いただいたのですが、誤って2回送って
しまったかもしれません。
重なっていたら削除してしまって下さい。
御迷惑をおかけしてすいません。

投稿: 哲人30号 | 2006/05/02 22:43

>哲人30号さん

はじめまして!
書き込み、どうもありがとうございました。
お返事が遅くなってしまい、ごめんなさい。

「クラッシュ」、本当にいい映画でしたね。
派手ではないけれどジワジワと迫ってくるものがありました。
本当に、日本人も他人事とは言ってられないと感じますね。
監督の視点がとても柔軟だなあと思います。

ところでトラックバックが届いていないようです。
お手数ですが、よろしければもう一度お願いできますか?

哲人30号さんのブログも、とても読みごたえがありますね。
これからもよろしくお願いいたします。

投稿: うっちー | 2006/05/06 01:58

はじめまして。カリフォルニア在住のゆっこです。

Crashを検索していて、たどり着きました。なんだか心に響いた内容だったのでTBさせて頂きました。
他の記事もゆっくり拝見させて頂きたいと思います。

投稿: カリフォルニアのゆっこ | 2006/05/30 01:25

>ゆっこさん

はじめまして、いらっしゃいませ。
カリフォルニアにお住まいなんですね。
そんな遠い場所からコメントをいただける、
インターネットの不思議な出会いに感謝です。

TBありがとうございました。
ゆっこさんのレビューも拝見しましたが、
米国に住んでらっしゃるだけに、説得力がありますね。
きっと、大変な思いも色々経験してらっしゃるのでしょう。

ゆっこさんの他の記事も興味深いので、
ゆっくり拝見させていただこうと思います。
コメント欄がないのが残念でしたが・・・

投稿: うっちー | 2006/05/31 23:15

この記事へのコメントは終了しました。

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受信: 2006/04/03 23:51

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