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2005/10/22

初講義

以前書いたとおり、土曜日の映像翻訳会社通いが始まりました。
初日ということで朝から緊張。
私なんかでついていけるだろうか・・・と、不安でいっぱい。

終わってみての第一声は「楽しかった!」です。
まだ入門ですし、訳す文章も文法的には簡単なものばかりです。
しかし、「翻訳」という作業の奥の深さにどんどん引き込まれ、
あっという間の二時間でした。
講義は、少人数のディスカッション形式で進んでいきます。

小テストの第一問は「I love you.」でした。
興味がある方は、訳してみてください。



****************************

私の解答は「愛してる」/「大好きだよ」。
周りも大体、似たような感じでした。

ここで、先生の質問。
先生「みんな"I"を省略してるね。なぜ?」
生徒「日本語では省略した方が自然だからです」
先生「そうだね。でも、省略するとしても考えなければいけない。
    なぜかといえば、主語によって語尾が変わるからです」

ここで、みんなで"I"の日本語訳を山手線ゲームのように言うことに。
「私」「あたい」「僕」「オレ」「それがし」「拙者」「小生」「おら」・・・・・
まだまだまだまだあります。
先生が、広辞苑で探してきたリストを見せてくれました。
英語の"I"に当たる言葉が、日本語では120個近くあるのです!!

同じように、"you"に当たる言葉は200個以上あったそうです。
何故こんなに多いかといえば、複数形も含むからなのですね。
「きみ」も「きみ達」も英語では「you」ですから。

「(私、あなたが)好きです」
「(あたい、あんたが)好きよ」
「(僕、きみが)好きだ」
「(オレはお前が)好きなんだ」

ちょっと考えただけでも、どんどんバリエーションが出てきます。
これが、英語ではすべて「I love you」になると考えると、
日本語の表現の幅広さに驚きます。

ちなみに「愛してる」という言葉は、もともとは日本語にはなかったそうです。
明治時代に、"love"という英単語の翻訳語として生まれたものだそうで、
だから日常であまり使われないのも自然なことだ、ということでした。
こんな雑学も、聞いているだけでとっても面白いです。

そのほかにも、前後の流れによっては「I love you」を
「大嫌いだ」と訳すことだってありうるとは、かの松浦美奈さんの言葉。
この方の字幕も劇場映画でよくお目にかかるはずです。
日本語として自然な流れにするためには、
「月がきれいだね」くらいに意訳するべきだ、とは夏目漱石の言葉。
また、名訳のひとつには「死んでもいい」というのがあると聞きました。

へぇ~なるほど、と唸ってしまうことばかり。

これらは講義のほんのさわりです。
翻訳とはどんなものか、少しでも伝われば幸いです。

また、タイトル・ライターさん(字幕を手書きする人)が書いた、
原版なども見せてもらいました。
ちっちゃな金属板(なんと、5mm×5mmくらい!!)に、
文字が浮き彫りになっています。
縮小されたこの金属板を、フィルムに焼き込んでいくのです。
フィルムは1秒間に24コマ進むので、
1秒間字幕を表示させたければ24コマ分に文字を焼き込むわけですね。
アナログな作業ですが、やはり手書きは味があるなあと思いました。
最近はコンピュータのフォントも増えていますが、
このままデジタル化が進むと思うと淋しいものがあります。

課題もさっそくいくつか出ました。張り切って取りかかろうと思います。
来週からの講義が楽しみでたまりません。

やはり、通信講座とは全然違った良さがあるなあ、とつくづく思いました。

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映像翻訳」カテゴリの記事

コメント

興味深い日記ですね、おもしろーい。
そうかそうか、なるほどー
なんて思いながら読ませて
いただきました(^ー^)

自分だったらどう訳すだろう?
やっぱり前後の流れがあって初めて
意味をもつんだと思うのですが、
「月がきれいだね」「死んでもいい」
なんて、ステキな訳ですねぇ。
翻訳家の方って、どこかしら
ロマンチストなんでしょうか?

次の講義もがんばってくださ~い!

投稿: えか | 2005/10/23 23:32

「帰りたくない」とかはどうでしょうか(笑)

話聞くだけでも講義がほんと楽しそうですねー!
翻訳って奥が深いなぁ…。

またお話聞かせてください(^∇^)

投稿: ようよ | 2005/10/23 23:44

>えか

おもしろいでしょー!
私もいちいち、「なるほど~」なんて
うなずきながら聞いていたよ。
周りの人の訳を聞くのがまた、
勉強になるし楽しいものです。

「ロマンチスト」はその通りだと思う。
あと「言葉オタク」。
先生のあまりのオタクっぷりに微笑んでしまいました。
すっごい楽しそうに講義するんだもん。

>ようよ

「帰りたくない」
素敵~!
ようよもなかなかのロマンチストだね。

翻訳という仕事に向いている条件の一つに、
「想像力豊か」「妄想しやすい」
というようなことがあげられていました。
あまりにも自分に当てはまっていて笑っちゃいました。

ようよも素質ありそうね♪

仕事につなげようと思って通い始めた講義ですが、
想像以上に純粋に楽しめています。
また、何かネタがあったら書きますね~(^-^)/

投稿: うっちー | 2005/10/24 00:04

いいなぁ!
ほんとうに楽しそうですね
好きなことに一生懸命チャレンジをする喜びと遣り甲斐で
生き生きしていらっしゃるのを感じて私もワクワクしました
これからも一緒に楽しませていただきたいと願っています
また書いてくださいね

投稿: あけみ | 2005/10/24 06:22

>あけみさん

映画好きなあけみさんなら、
きっと同じように楽しめるでしょうね。
教材も映画ですから。
(この日は「アメリカン・スウィートハート」でした)

これからも折にふれて報告していきますね。
楽しいと書かずにはいられないと思いますので・・・。

投稿: うっちー | 2005/10/24 23:43

妄想力なら、私もようよもなかなかのものですよ(笑)
楽しそうな人をみるとこっちもワクワクして
きますよねw
またなにかネタがあったら聞かせてください☆

投稿: えか | 2005/10/25 00:42

>えか

おお、妄想仲間なのか~。
なんて心強いo(^-^)o

応援ありがとね。

投稿: うっちー | 2005/10/25 07:22

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