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2005/10/31

【課題】歌詞の翻訳

さて、先週の映像翻訳講座の課題の一つが、歌詞の翻訳でした。
「Star-spangled banner」(アメリカ国歌)と、ジョン・レノンの「Imagine」。

歌詞を全部載せるのはアレなので、
印象に残っていることをポツポツと書いてみます。

まずアメリカ国歌「星条旗」ですが、これは苦戦しました~。
まず、意味を理解するのが大変だったんですね。
戦争中に書かれた詩で、さらに異国の国民性で書かれていますし、
どこから何を見て書いているのかが、なかなか掴めませんでした。
主語と動詞もわかりにくい。

興味のある方は、こちらに全部の詞がのっています。
ウィキペディア「アメリカ合衆国の国歌」

やっと全体の意味がとれたとき、その勇ましさに驚きました。
良くも悪くも、非常にアメリカらしい国歌です。

上のリンクのウィキペディアは、ちょっと意訳しすぎなのですが、
詳しく解説を始めると文法の講義になってしまうのでやめておきます。
ひとつ印象に残ったのは、「rocket」という単語。
日本語ではロケット、ロケット弾です。
最初、パーッと訳したときにはロケット弾としていたのですが、
どうも情緒のなさが気にかかり、調べた末に「のろし」としました。

時代背景を考え合わせても、やはり「ロケット」は違和感があります。
さらに、先生が提案した訳がさすが!!
「火矢、なんかどうでしょう」
うーん、いいですねぇ。

辞書には載っていない言葉をさぐるのが、翻訳の醍醐味です。

一方、「Imagine」の方は、歌詞の理解は易しいです。
文法的にも中学生くらいでしょう。
しかし、いざ訳してみると奥が深いのでした。

「You may say I'm a dreamer」という詞があります。
私の訳は、「君は僕を夢追い人と言うかもしれない」。
dreamerという単語には、
理想家とか夢想家とかいう訳をあてることが多いと思ったので、
あえてちょっと変えてみたいと思ったのでした。

そうしたら、受講生の中にはもっとすごい人が!!
「君は僕のことを 頭がおかしいと言うかもしれない」
ちょっと意訳しすぎかもしれませんが、なるほどーと思ってしまいました。

さて、この曲の一番の難関が、possessionでした。
「Imagine no possessions」
無理に日本語にするなら、「所有というものがないと 想像してごらん」
しかし、英語のpossessionには、
支配、占有など、もっと広いニュアンスがあるようです。

それは分かるものの、それにあたる日本語がないのですね・・・。
「所有」という言葉自体も、歌詞としては情緒がなさすぎる。
私はさんざん悩んだ末にギブアップ、所有としました。

ドキドキしながら皆の訳が読まれるのを待っていると、
来ました来ました~。

「世界はみんなのものだと 想像してごらん」

なるほどー!!
所有・占有・支配がない、つまり全てが皆のものである、という意訳ですね。
唸りました。

もう一つ。

「無欲な世界を 想像してごらん」

所有という概念がないから、欲しいという欲望も生まれないというわけです。
ふむふむ。

みんなすごい!
素直に心の中で拍手していました。
違和感がありながら、途中であきらめてしまった自分に反省です。
そして、翻訳という作業は本当に頭を柔らかくする必要があると実感しました。

どこまで意訳して良いのか、というのがまたもう一つの難関ですね。

さて、この日の講義では「ハコ書き」というものもやりました。
こちらについても、後日書けたらと思います。

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コメント

う~ん、深い…。でも、面白いね!でも、国歌なんて日本国歌でさえチンプンカンプンだよ。続報、楽しみにしています(^○^)タイ旅行記もね♪

投稿: ミオポン | 2005/11/01 13:27

>ミオ

おっと!!
そうだ、タイ旅行記もあったね!!

投稿: うっちー | 2005/11/01 22:22

うっちーさん
活力に充ちて生き生きしておられるのを感じます
好きなことに熱中できてお幸せなんですね
日記を拝見していると私も楽しいのですが、
今日は『星条旗』の全文を読んで涙がこぼれてしまいました
国歌を歌い勇気を奮い起こして戦場へ駆出されていく兵士が
もしも家族だったらと思いますと胸が痛みます
平和を大切にしたいです

投稿: あけみ | 2005/11/02 19:27

単語1つ取っても、表現の仕方って
何通りもあるんですね。あらためて実感。

中学のとき、どんな文章だったかは
覚えてないですが、辞書にもないような意訳を
したら、テストはペケで返ってきた記憶が。
その当時は教科書どおりじゃないと
さすがにダメだったんですかねー(^^;
…って、実は意訳でもなくて単純に間違ってた
だけなのかもしれませんけど(笑)

おもしろい世界ですね☆

投稿: えか | 2005/11/03 00:08

FarsideのYoshinoです。
歌詞って、情報の伝達じゃなく情感を表すもの
だから、すごく深みがありますよね。
PCのソフトやハードの英文マニュアルは、技術
用語(多くはまだ日本語化されていないので英語のまま)
さえ知っていれば、結構簡単なんですが、歌詞は
読み取るのに時間がかかります。
以前、リッキー・リー・ジョーンズの"カンパニー"や
ベット・ミドラーの"rose"・"When a man loves a woman"
をみんなで訳して、つきあわせてみたことがあります。
語学力はみんな似たり寄ったりでしたが、それまでの
人生で経験してきたことが訳に反映されるようで、
それぞれの解釈の違いが大きいことに驚きました。
深みがあるからおもしろいんですね。

投稿: Yoshino | 2005/11/05 10:05

>あけみさん

私も、今まで何となく聴いていたアメリカ国歌でしたが、
中身を知ると衝撃でした。
しかし、よく読むと戦争賛歌のようにも取れるんです。
一晩中の爆撃にも耐え抜いて、未だそこに自分たちの旗がある。
そこで歓呼の叫びを上げる光景が目に浮かびます。

戦争の勝利を誇る歌。
自国の強さを誇る歌。
ある大きなイベントなどを見ていると、この国歌の最後に、
戦闘機が編隊を組んで飛んでくるんです。
その光景は、ちょっと恐ろしいものがあります。

平和を祈りたいですね・・・。
最近は、ちょっと日本もはっきりしないですし。

>えか

学校のテストじゃ意訳は許されないよね。
そういう教育もどうかと思うけどね。
「Wash your hands with soap and water.」
という文章の訳し方について、
今読んでいる本に興味深いことが載っていたよ。
「石鹸と水で手を洗いなさい」
というのは、日本語では不自然にすぎる。
「石鹸で手を洗いなさい」という文章の中に、
水を使うという情報は自然に含まれると。
日本語としては、断然こちらの方が良い。
でも、きっと学校のテストでは×だよね~。

>Yoshinoさん

こんばんは。
最近、カラオケでレイラになりきってます(笑)。
私も仕事では特許翻訳のチェックをしているのですが、
歌詞となるとあまりにも方向性が違って戸惑いますね。
実務翻訳は、意訳が嫌われたりもしますしね。
私は、こうして翻訳を他人と突き合わせて・・・
というのが初めてでしたが、目から鱗でした。
本当に面白いものですね~。
1つとして同じものはないんですもん。
言語表現の無限の深さ・・・とりこになりそうです。

ちなみに、ベット・ミドラーの「Rose」は
私も大好きな曲です。

投稿: うっちー | 2005/11/06 03:36

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