国際人って?
ニュースキャスター・安藤優子さんの、留学記。
例のごとくお昼休みの本屋さんで、気軽に手に取った一冊。
安藤さんが留学していたのは高校時代。
なのに、視点がすばらしく鋭い。
書いたのが最近だから、にしても鋭い。
ただの留学体験記ではなく、文化の違いや政治のあり方、
戦争の爪あとにまで思いを馳せているところは、さすがとしか言いようがありません。
それもこれも、「ベイリー家」という大家族の中に放りこまれたからこそ、得られた経験。
家族という小社会の中に凝縮されたいろいろな物が、安藤さんの中に入り込んでいく。
一人アパート住まいでは、こんなに意義のある留学にはならなかったことでしょう。
今現在の安藤さんの原点が見えてくるような留学記です。
アジア人が、アメリカでどう見られているのか。
ベトナム戦争のあと、アメリカの一般市民たちはどう償おうとしているのか。
アメリカ人は皆、アメリカ万歳なのかと思いきや、そうではないこと。
アメリカが他の国にしていることを嫌悪して、
物が食べられなくなってしまったアメリカ人女性の話、などなど。
アメリカという国、家族というコミュニティを通して、色んなことを訴えかけてきます。
他の国を知ることが、自分の国を知ることにつながる。
それが実感できます。
決して、良い面ばかりではない、アメリカ。
しかし、日本だって同じこと。
「アメリカは銃社会だから怖い」
「日本が一番安全で暮らしやすい」
そんな考え方しかできない限り、「国際化」なんてありえないのではないでしょうか。
愛国心は悪いものではないけれど、盲目的な愛国心は危険だとも思います。
アメリカは黒人差別をする国だ、というイメージがあったとします。
じゃあ日本には黒人差別はないのか?
ないかもしれない。黒人がそんなにいないから。
でも、差別ならいくらでもありますよね。
特に同じアジア系の人々を下に見る傾向があるのがとても滑稽だと思うのですが。
もちろん、差別をしない日本人だっているし、
差別をしないアメリカ人だってたくさんいることと思います。
つまり局所的な物の見方にはあまり意味がないと思うのです。
この留学がなかったら、
第一線のニュースキャスター・安藤優子は存在しなかったのかもしれません。
もっと柔らかな視点を持ちたい。
そう思わされる一冊でした。
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